【◇】群 青 エ ー ス . 5

205 ページ10

.






イップスに悩む選手の多くは身体能力や技術が優れて高く、周囲から期待されている人ほどなりやすいのだという。









”勝たなければならない”


”自分がなんとかしなきゃ”


”迷惑をかけられない”








Aの場合はその責任感の強さとプレッシャー



そして幼い頃のトラウマや家庭環境による不安などが重なりイップスを引き起こしてしまった。









A「イップスになった時期は…中2」









中2の時期といえば


バッテリーを組んでいた鳴が中3になりシニアでの最後の試合が近づいてる大事な時期だ。


そして



もうひとつ心当たりがあった。



その心当たりがあるのは…栄純。



忘れもしない、中2の頃のA。









A「栄純は…その頃のことよく知ってるよね」



栄純「Aの…母さんが亡くなった時期」








限られた人しか知らない



Aが絶望のどん底に落ちたもうひとつのきっかけ。


むしろこれが一番大きな原因と言ってもいい。









A「生まれて初めて感じた…プレッシャーと深い悲しみ」



A「なんで今なのって思うくらい一気に襲いかかってきてどうしたらいいのかわからなかった」









─なんで…出来ないの…！？


─私がやらなきゃ…鳴が、鳴とできるのは…これが最後なんだから









自分の体じゃないような変な感覚に




バットやボールを握る指先に力が入らなくなったり




返球する時にコントロールが効かなくなり暴投してしまう恐怖。




これはもうできない、そう思い込んでしまったのだ。









A「誰よりも得意であった動きが出来ない、これほど悔しいことはなくって」




A「なんとか…当時バッテリーを組んでた鳴の最後の試合まではと踏ん張ったけれどそれ以降はさらに不調が続き…結果」









場の空気がさらに凍りつく。


もし自分がなったら…他人事の話ではない。


Aが丹波のことがあったときあんなにも泣いていた裏には想像できないほどの気持ちが隠されている。









御幸「シニアを抜けるって選択に至ったってわけか」



A「うん」









全てが繋がった。



Aが言った”できないからやめる”は苦渋の決断。



一体どんな気持ちで、どれほど悩み



その結論に辿り着いたのか。

206→←204

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す