【◇】群 青 エ ー ス . 5

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あの絆創膏の件からしばらくした頃


あの後もちょくちょく練習試合とかで会うことがあり、その度に鳴と合わせて3人でごちゃごちゃするのが恒例になった。



そして、痛くて辛かった生活についに変化が訪れた。









鳴「一生傷残ったらどうするの？ソレ。」








鳴は中3になり


Aは中2になった。


そして両親は離婚した。


きっかけはAの怪我だ。








A「おでこだから目立たないから平気だよ」




鳴「そういう問題じゃないと思うけど」







Aの額には包帯がぐるぐる巻きに。


父親の暴力がエスカレートし


ついに包丁登場。


母をかばったAは額に切り傷を付けられてしまったのだ。









A「脳には異常もなかったし平気だよ」




鳴「でもさぁ…見てて痛い」









このことをきっかけに


母は勇気を出し、父親と離婚した。


父親は母の実家の金目当てで母に近づき結婚した。


母は父親の言葉を信じ、親族から反対されても結婚に行き着いたのにこの結果だ。


結局父親のいうことは嘘で、結局最後まで金目当てだった。









鳴「無事ならよかったけど……」








Aの頭を触ろうと

鳴が左手を出した時

Aがサッと避けた。

しかも…酷く脅えた顔で。









鳴「って……どうしたの急に」




A「え…あ、いやビックリしただけだから気にしないで」








傷は大したことなくても


心は酷く傷ついていたし


体もその恐怖からなかなか逃れられない。

父親は最後にとんでもないものをAに残してしまったようだ。









鳴「……俺の事、怖いの？」




A「そんなわけないよ、じゃなかったらバッテリーを組んでない」









明らかに


いつもなら避けない鳴の手を


Aは避けた。


そんなわけない、という顔もどこかひきつって見えた。









鳴「最近調子も良くないし、やっぱり無理はダメだね！」




A「調子…悪く見える？」








光の宿った目が


心做しか光がない目に見える。


残されたのは…恐怖。


伸ばされる手が包丁を振りかざしてくる父親の姿と重ねてしまうのだ。

その恐怖がAの野球を狂わせていく。









「バッターアウト！」









バットが振れない。


タイミングが掴めないんじゃない。


急に…急に怖くなった。

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