[wrwrd]青に溶ける (ページ45)

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嗚呼、本当に気付かれていたのか。全部知っていて、黙ってくれていたのだろう。

「……気づいてらしたんですか」

こんな所で誤魔化しても何にもなるまい。抑も、前の発言で、私が何か『そう言う事』を隠していることは、彼らには解って居たらしいのだから。

無言の肯定。

私は少し眼を閉じて、本当の事をもう言ってしまう事にした。今の今迄、必要以上の反応は相手を刺激する、とだんまりを決め込んで居たと言うのに、崩れるとなるとあっという間の沈黙だ。

「１カ月……否、２カ月くらい前からです」

「内容は？」

間髪入れずに入ってきた問いに、思い出しながら指折りをした。

「一寸部屋荒らしたり位……まあ最近は物がなくなったり、逆に物が増えてたりもして……」

苦労が瞼の裏に蘇る。自分乍ら、涙ぐんで褒め称えてやりたいほど毎回部屋を検査して居たのだ。

「あ、後は盗撮盗聴、位です」

身体的な方に及んだのは今回閉じ込められた案件位で、こう見ると精神的に来ているだけだなあと言う感じがした。精神と身体は可成り共鳴して居るから。

「まあ後は、今回一寸閉じ込められたくらいのもので……」

にしても、字面だけで見れば、案外大した事ないな、と、分析する。

例えばまだ罪を擦り付けたりだとかされて居ないし、仕事の書類を消されたことも無い。身体的暴力も無ければ、性的暴力に出られたことも無い。

案外、手加減して呉れて居たのかも知れないなあ、とぼんやり思って居ると、

「……あの……？」

彼らは変わらず黙っているだけだと言うのに、纏っているオーラが違う。

書記長に至っては、この状態で怒られたら精神が砕け散るんじゃないかって位怖い。書記長の方を見られずそっと我が上司の方に視線を逸らしたが、無言でにへらと軽薄な笑顔を浮かべているのみ。何処か裏のある笑顔のような気もする。

「……何で黙っとったん？」

書記長のドスの効いた声に、チクチクと背中に厭な汗が流れる。犯罪尋問されて居るみたいだ。まあ、強ち間違ってはいないのだろうが。

正直に言うしかないし、こんな所で誤魔化しても仕方がない。何より小さな癖を見抜く位だ、下手な嘘なんてさっさと見抜いてしまうだろう。小さく息を吸う。

「……下手に反応すると、寧ろ過激化するかな、と思ったので。或る程度我慢すれば、まあ耐えられない訳じゃない程度の物でしたし……」

実生活に影響を及ぼしたら、流石に動こうとは思いましたが、と付け足す。