[wrwrd]青に溶ける (ページ41)

今日:7 hit、昨日:21 hit、合計:104,374 hit

３９ページ41

……随分経ったが、嫌がらせは収まらないまま。

そろそろ本格的にしんどくなってきた今日この折、更にしんどくなる案件が舞い込んだ。まあ案件と言うが現状なのだが……

痛む頭に、不愉快にも側頭部から微量ながらに流れる血、縛られた手足。

まあ要は、殴って気絶させられて閉じ込められた。

一応軍人上がりなのだが、本当にへこんでしまう。まあ最近は食事も喉を通らなかったし武器と触れ合う事も無かったので仕方ない結果ではあるのかも知れないが、だとしても情けなさに嘆息しかない。咄嗟に反応できないなんて。

薄暗い、此処は倉庫か何処かだろうか、ひんやりとした埃っぽい空気。
流石に巨大冷蔵庫の中に入れて凍死させるほどの勇気はないようだ。何よりである。

と言うか、今何時だろう。仕事には……確実に遅れていると言って良いだろう。

全く、今迄此の私が温情＿＿まあ半分以上打算だが＿＿を掛けて黙ってやっていたと言うのに、恩を仇で返す様な事をしやがって、あのクソ犯人、余計な事を……。

一寸した絶望を軽口の様な思考で叩きのめしつつ、静かに考える。まあ、此の縄はあってないような物なのだ。問題は、如何脱出するかと言う事で。

後ろ手で縄抜けをしながら、考え込む。嗚呼、憂鬱だ、事後処理が憂鬱だ。

……其れに、もう、こんな事をして何になる、と言う、無気力を携えた精神疲労が、何より痛い。

いけない、集中を切らすな。

手元に集中し、縄からは抜ける事に成功した。相当固く結んであったので悪戦苦闘したが、まあ、気力で何とかなったようだ。

自由になった手首を何度か回し、今度は足の方を縛った縄と格闘する。脚の方は未だ、比較的容易そうだった。

……こんな所にまで、手を出すか。

まあ私は一応性別上女だし、だとしても流石に異様だろう。此処が最後に歩いて居る所から近い場所だったとしても、違和感を持たず……何て。

盗られたモノや、事の手口が、次々と頭に思い浮かんでくる。不確定要素などを含んだとしても、其処に浮き上がる大体の模様は殆ど解ってしまった。

……『解ってしまった』。

ゆっくりと立ち上がる。足首を回す。

案の定、建物には外から錠をしてあった。まあ予想通りなので、動揺は無い。上にはダクト、後は小さな窓。視界の半分以上を覆う木箱に、嘲笑う。

「舐めやがって」

髪の毛を結わえ直す。

後の事は簡単だった。