[wrwrd]青に溶ける (ページ38)

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にしても、こんな面倒な事を清掃時間に熟すなんて、メイドも暇なのだろうか。

之だけ部屋を荒らして居れば音などの証言も出るのかも知れないが、まあ期待はできないだろう。犯人探しと再発防止に努めたいのは山々だが、面倒なのでもう良い。

毎日毎日やって居れば流石に気付かれる可能性があるので、そんな事にはならないだろうし。

実生活に支障の出ない限りは、まあ黙っておいてやろう。

必要以上のアクションを取ると、向うが逆に面倒になる。

傷つく以上に相当苛立って居たが、無理矢理抑え込む。

数の少ない本を本棚に戻し終え、ふう、と溜息。之でまあ元通り、と言う訳では無いだろうが、奇麗に片付いた筈だ。

嗚呼、苛々する。一寸は傷つくけど其れ以上に苛々する。

小さな書き物机に近付いて、適当なノートを手に取り、ページを破る。そして、只管文字の羅列を書き殴った。

何時ものストレス発散法だ。誰かに当ってはいけないから。
当人が目の前に居て反撃できるようならまあ手っ取り早くそうしてしまうのが私の性格だが、やり場のない苛々とした感情を発散するにはこれに限る。

溜息を吐く。

訳の分からない文字の羅列がランダムに並ぶページをゴミ箱の上まで持って行き、ライターで火を付け、燃やした灰を塵箱の中にパラパラ落とした。

暫くは嫌がらせ期間が来るだろう。収まるかどうかは別にして。

……否、収まって貰わないと、流石の私でもノイローゼになる。其れは駄目だ。

が、現状本当に効果があると確信できる手も無い。なら、今は只管耐える時期だ。

少しは冷静になった頭が、気苦労に溜息を又弾き出した。

ふと、頭の中にあのへらりと笑う上司の笑顔が思い浮かぶ。

そう、之は、仕方がない、こと、だ。

窓を開ける。
夜がいよいよ盛ろうとしていた。月が静かにその美しさを惜しまず見せている。

夜風が遠慮がちに部屋に入って来て、下した髪を揺らした。涼しいような、生暖かいような、そんな風だ。

月を見上げて、其れから、窓とカーテンを閉める。

まだまだ、こんなものじゃないんだろう、私。

全部、昇格する前に解って居た事なんだから。そうだ、全て。

整えたベッドに近付いて、ぼすりと飛び込んだ。もう面倒だ。シャワーは明日にしよう。一寸早めに起きて。

そんな事を考えて居たら、いつの間にか、瞼がゆっくりと落ちて、思考が緩んで行く。

其の儘、柔い眠りに落ちた。