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「……窶れてらっしゃいます?」
一日休暇を貰って扨、仕事に来てみると、上司が死んで居た。
「Aちゃんやあ〜……!」と抱き着いて来ようとしたので其の身をひらりと躱しつつ、何時も通りと言えば何時も通り……あ、そうでも無いかな、と分析を進める。
「どうかなさいましたか?」
首を傾げる。たった一日で何があったと言うのか。まあ何と無く予想は付いたのだが。
「トン氏が昨日、俺に付き切りやったんよ……」
眼が死んで居る。あの書記長が付ききり。内容は察して然るべきだろう。
そう言えば、先程書記長に書類序に挨拶に伺った時、後ろの本棚に竹刀が立てかけてあった。つまりはそう言う事だ。
お疲れ様です、と形ばかりに労う。
その苦労を察さない訳では無いが、如何考えても普段の仕事に向かう姿勢が悪いので、寧ろ書記長の方がご苦労様なのである。
「やっぱ第一補佐はAちゃんやないと」
言葉に少し反応してしまう。曖昧に笑った。若干誤魔化したと言っても良い。
情けない場面ではあるが、そう言われて嬉しくない奴なんていないと思う。
自分の仕事が認められているようで、心にほわりと温かい感覚が湧き起る。場面が場面なので、そんな訳は無いのだが。
仕事と上司の機嫌の折り合いを付けつつ何とかやって来た。其の為には、少しでもこの人の人格的な所を含めた事を仕事的な意味で知る必要があった。
そう言う言葉がふとした場面で出て来た時、不謹慎かもしれないが、嬉しい。
「まあそれはそうとして、今日も仕事は無くなりませんよ?」
「厭ああああああ!」
首を傾げて一寸笑うと、問答無用で襟の裏を引っ掴んで、支度はできたらしい上司を執務室へ引っ張っていく。
抵抗の声を上げているが、知った事ではない。
先程ちらりと見た執務室の書類には、如何考えても今日した方が都合の良い物が幾つか見受けられた。昨日の悲劇()を乗り切った事から今日は少しは休憩を多めにとったりしてやるにしても、之ばかりは片付けないと御話にならない。
サボりを黙殺してやるとしたならその仕事が終わるまでだな、と考えつつ、廊下を進んで行く。
ふと、上司を甘やかしすぎだろうか、と思った。
実際、今『サボりを黙認するなら』と仮定したのだから。
……否、今日位は見逃して遣っても良いと其れだけだ。
言い訳してみても、結局は同じ事。
何だかんだ甘いんだよなと思いつつ、手は緩めなかった。
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かなと - 編集画面の関連キーワード入力の下をよく読みオリジナルフラグをお外し下さい違反です (2019年8月20日 18時) (レス) id: fb24f34b5f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遥彼方 | 作成日時:2019年8月20日 18時