[wrwrd]青に溶ける (ページ15)

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言葉を受けて、突っかかって来た第二補佐官は、あからさまに不機嫌な顔をした。

しょうもない言い争いをするのは本当に駄目なのだと解って居るので、余り喧嘩腰にモノを話してはいけないし、相手の機嫌を損ねるのも得策ではないのだろう。

そんな事は百も承知なのだが、事ある毎に私に突っかかり、散々馬鹿にした挙句、自分の仕事でさえもこちらに押し付けてくる態度は、同じ国の中枢で働く人間として虫唾が走る。

……普段はそう思い、態々関りを避け、其れなりの愚にもつかない仕事位は此方で処理している。
其れを良い事につけ上がってくる人間であることは理解が及んだので、意味の感じられない溝浚いに本気で対処した事は無い。元々向うの案件である。

が、今回ばかりはそうもいかなかったので、さっさと退散したかったのだが、余程此奴は私に構って欲しいらしい。

「そうして権威に頼り切るから仕事が円滑に回らないのでは？」

「仕事を円滑に回すために部署を分け権限を付与しているのですよ？」

此奴が其れを云うか、と思いながらも、厭味には厭味で対応していく。空気が一瞬ごとにぴりぴりとして行くのを肌で感じる。ざらついた沈黙が下りる。

断じてこんな事をするのが好きではないのだが、仕事で関わる中で尊敬する処の見つからない人間に、はいはいそうですかと頭を下げ続けるのにも限界がある。割と短気なのだ。

そんな私達に、第一補佐官は如何言葉をかけて良いのか判らないのか、書類を片手におろおろしている。後ろでこんな事をされていては書類の内容も頭に入ってこないだろう。

「お、落ちつい……」

「はいはい、そんなにぴりぴりしないのー」

第一補佐官が口を開きかけた時、其の場には余りに似つかわしくない間延びした声が響いた。

其の声で、その一言で、今迄の空気が霧散する。此の人の声は、魔法だ。そう思わせる程に。

「う、鬱様！？」

第二補佐官は神出鬼没に現れた我が上司に驚きを隠せない様だった。まあ只私達が此方側に気を取られて扉の方に注意を払って居なかっただけなのだろうが。

開きっ放しの扉から、「俺もおるで」とラフな足取りで入ってくるもう一人の幹部。

この執務室の最高権限を持つ幹部、コネシマ様だった。

「こ、コネシマ様」

第二補佐官は顔の色を失った。まあそれはそうだろうな、と心の中で同情する。私も相当やらかした自信があるので、内心ひやひやしているのだ。