[wrwrd]青に溶ける (ページ11)

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「おーい、其処の……大先生の所の第一補佐官！」

又逃げたな、と溜息を吐きながら、出来る分の書類を持って行っていると、後ろから背中に当たる様な声がした。

鬱様の補佐について居るのは、他は男性だが少しは存在する。が、第一補佐官と言うとまあ、そう言う事だ。

「はい、如何かなさいましたか？」

諦めて後ろを振り向き、脚を止めた。身軽にかなりの速度で走って来ると、脚をぱっと止める。息切れも無い処は、流石と言う処である。

紛れもない幹部の一人、シャオロン様だ。
赤いニット帽とオーバーオールが常装備。今日はピッケルを肩に担いでいる。何かしでかしたのだろうか。

「大先生見てへん？」

嗚呼、その事か、と納得した。簡潔に、いえ、と頭を振った。「小一時間ほど前に姿を消されましたよ」まあアタリは付いて居るのだが、と思いながら返答する。

「まーた彼奴は……」

はああ、と盛大に溜息を吐くシャオロン様には非常に申し訳ないので、「済みません」と頭を下げる。補佐官としては、彼の居場所位は把握して然るべきなのかもしれない。

「否、別にあんたの所為ちゃうし」

「何か言伝御座いましたら、お伝えしますよ」

否、ええわ。有難うな、と、眩しく笑うと、「大先生何処やー……」と呻くように呟き、「じゃな」と行こうとする。其れを、少し申し訳ないが引き留めた。

「あの時間に此処を出たと言う事は、多分今日はいらっしゃるにしても、城の中だと思います」

逃げ場所にアタリは付いて居るが、新たな逃げ場所を発見している可能性も否めないので、此処までに留めておく。未だ城下を歩き回って探すよりはましだろう。

「あ、そうなん？助かったわ、未だ城の中やったら探しやすい」

じゃ！と今度こそ此処を走り去っていく。嵐のような人だ。元気なのは良い事だ。其の元気を私にも少しは分けて欲しい。少しは仕事のスピードが速くなるかもしれない。

「……行くか」

之で城内に居なかったら、切腹しよう。

そう思いながら、再び書記長の執務室を目指した。