儚き姫のおとぎ話 (ページ3)

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一皿目～怪談レストランの日常～ページ3

丑三つ時の静寂な山の中に
ポツンと明かりに照らされたレストランがあった

そのレストランの名前は〝怪談レストラン〟

今宵も死者が背筋も凍るような逸品を求めてやってきていたようだ

年季のある落ち着いた雰囲気の店内では
明らかに人ではない者たちが料理を堪能している

この場所ではそれが普通なのだ

「支配人、お客様がお帰りになられます」

飾っている花の手入れをしていた支配人に
たいそう美しい女性が近づいてきて言った

「お客様、本日は誠にありがとうございました
どうぞお気を付けてお帰り下さい」

「またのご来店を心よりお待ちしております」

どうやらこれが最後の客だったようだ

深々としたお辞儀の後、支配人…ギャルソンは
横にいる女性に優しく笑いかけた

「お疲れ様でした、A…今日もまた一段と美しい」

「し、支配人…あの…恥ずかしいです」

歯が浮くような言葉を言うギャルソンに
顔を赤くして恥じらうA

「あらら…お仕事が終わったら名前で呼ぶ約束でしょう？」

「っ～…ギャルソン、さん」

「ふふ…上出来です」

そう言って彼がAの頬に優しくキスをすると
彼女の真っ白な肌が林檎色に染め上がった

「俺達もいるのにお構いなしかニャ…」

その様子を見て呆れる化け猫

「あの二人はいつもの事じゃない、そっとしておいてあげましょ？」

それをたしなめる幽霊姉さん

「残念だわ…お菊ちゃん、髪が伸びたから切ってほしかったのに」

そう言いながら手でつまらなそうに髪を梳かすお菊ちゃん

怪談レストランの従業員は苦労人ばかりです…