3ページ目 ページ5
気付かれるとは思わなかった。
「……サンジ」
俺の腕の中にいるのは大切な弟。
ずっと探して、十数年の時を経て今、この瞬間にやっと見つけられた……その体温は暖かくて、大きく、その存在をしかと感じられる。
俺も旅をしている間に成長していったが、やはりお前も成長するんだな。
最後に見たあの幼い姿からすっかり大人らしくなった自分の弟を見て、しみじみとした気持ちになっていると…ある事を思い出した。
___言わなくては。逢った時に伝えようと決めていた言葉を。
意を決し、俺は口を開く
「___すまなかった」
「……え?」
謝罪の言葉を溢せば「何が」と、サンジは俺を見る。
「……気付いてやれなくて、すまなかった。
お前が出て行った日、港で泣いていたレイジュから話を聞いた。其処で初めてお前が生きていたことを知ったんだ。
俺が気付いていれば……こんな事にはならなかった。辛かっただろう、本当に、すまない……
俺は、兄失格だ」
話をしているうちに、涙がボロボロと零れ落ちてくる。
サンジの前ではと、眼を擦って止めようとするが、長らく出る事が無かった涙をどう止めれば良いのか分からなくなっているらしい。
すると、俯いていた俺の頭には温かみのある重さが加わった。俺の頭に手を乗せたサンジは優しい声色で言う。
「……兄さんは悪くねェよ……何も。
……なあ、A兄さん
オレさ、ガキん頃は兄さんや母さんにあんなの食わせちまったけど……今はちゃんと作れるんだぜ?
料理をさ」
「……料、理……?」
俺が聞き返した言葉に、サンジは頷くと続ける。
「……それに今は信頼できる仲間もいる。
昔は色々と災難はあったがそれでも楽しいんだ」
そう言っては、サンジはこれまでの経路を端的に話してくれた。
こんな俺に対しても嬉しそうに教えてくれる事に最初は驚いたが、彼が本当に明るい笑顔を此方に向けるものなので。
「ふふっ……そうか、良かった。
今、お前は幸せなんだな」
何時しか涙も枯れ、思わず笑って言った。
「っ……ああ! 幸せだ!
……そういえば、A兄さんは何でここにいるんだ?」
サンジは肯定の意を示せば、何かを誤魔化すかのように話題を変える。少し疑問を覚えながらも特に気にもせず、俺は答えた。
「新聞で此処の情報を知り、そしてお前の手配書を見た。
黒足のサンジ。
何故、似顔絵で描かれているのかは知らないがお前だろう。あれは」
途端にサンジがピシリと固まった。
333人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ONEPIECE」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Noah†(プロフ) - 更新待ってました(*´∀`)ワクワクしっぱなしです…これからも頑張ってください(*´-`) (2018年1月8日 0時) (レス) id: 16f26e4166 (このIDを非表示/違反報告)
しーた(プロフ) - 凄く面白かったです…!!更新ずっとお待ちしております… (2017年12月25日 11時) (レス) id: e6fa4e5308 (このIDを非表示/違反報告)
みかづき(プロフ) - め、めちゃくちゃいい所なのに!…すっごく面白いです!続き気になります!更新頑張ってください。 (2017年8月24日 11時) (レス) id: 40dece2299 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:レフト | 作成日時:2017年2月21日 2時