開花のコンツェルト ページ47
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「……A」
うつむいた顔を覗き込んで呼んだ声は、むしろ吐息に近い。掠れて溶けて消えていきそうで、柄にもなく泣きそうになる。
うっすらと開いた唇に、そっと自らのそれを触れ合わせた。
愛する者の口づけで眠りから覚めるのは、どこの異国の姫だっただろう。ふる、と震えた睫毛の先が、ゆっくりと持ち上がる。
「――……なに、かわいいことしてんの」
未だ眠りのふちに足元を浸したままのもたついた声が、ゆっくりと言う。反射的に身を引いた仁王を追いかけて、唇に食らいつく。激しくはないが甘ったるいキスを受け入れながら、こいつのどこが姫だって言うんだと自分の思考に自嘲する。
「――あ、腰痛ェし首痛ェ。やっば」
「……だっさ」
「うるっせ」
仁王は知らない。今目の前で伸びをしながら、情けない悲鳴を上げているこの男が先ほど見せた、狂気の片鱗も、得体の知れない化け物に変貌しかけていることさえ。
仁王は、まだ知らない。
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角砂糖(プロフ) - 美琴さん» ありがとうございます!!(大声) (2020年3月11日 19時) (レス) id: 651af228bd (このIDを非表示/違反報告)
美琴 - 好きです(突然の告白) (2020年3月9日 20時) (レス) id: 0419c563a9 (このIDを非表示/違反報告)
角砂糖(プロフ) - 蘇芳さん» この作品を愛していただき本当にありがとうございます。この話の続編は、今の所はあまり考えていません。今非常に私生活が忙しく、それが一段落したら何か書きたいなとは思っていますので、いつになるかわかりませんが、もし気が向けばお付き合いいただけると幸いです。 (2020年1月30日 4時) (レス) id: 651af228bd (このIDを非表示/違反報告)
蘇芳(プロフ) - とても面白くて一気に読んでしまいました!もしもあるのなら続編楽しみにしています。これからも頑張ってください! (2020年1月24日 20時) (レス) id: ec6c109e68 (このIDを非表示/違反報告)
ピット☆(プロフ) - 角砂糖さん» そうです!覚えていてもらえて嬉しいです!!予定があるかはわかりませんが次の作品をお待ちしてます! (2019年11月20日 1時) (レス) id: f631e9f6d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:角砂糖 | 作成日時:2019年3月18日 21時