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平服せよ、 ページ39

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 ゲームは進行する。それらをAは、時折ちゃちゃを入れながら眺める。
 試合を決する最後のワンショットを地に伏せながらも決めて見せた仁王に、とろけるような笑みを見せて。
 裏切り裏切られを繰り返す試合模様の果て、乱暴な手でゲームを終わらせた丸井に、不謹慎にもニヤニヤをこぼし。
 阿久津仁というどうにも扱いづらいであろうカードに手を焼く真田に、ケタケタと笑って。
 彼は、彼の仲間たちの奮闘を、愛おしいもののように眺めていた。


 ことが動いたのは、その試合群も終盤、この日の大一番と言っても過言ではないそれのとき。否、ことを動かした人物がいたと言ってもいいだろうか。
 Genius10のトップ――イコール、U-17日本代表のトップ。少なくとも十七歳以下の枠では、日本で一番強い人物。
 平等院鳳凰。
 徳川を下した平等院、そして合宿退去の処分を受けた樺地と越前――それに少なからず動揺が広がる中、彼がコートの真ん中で憮然と呟いたその言葉は、嫌に通って響いた。
 ――物足りんな。
 と。
 平等院はゆっくりとギャラリーを見回す。ひとまとまりに集まっている中学生たちの間に、じっと目を凝らしている。それはあたかも、誰かを探しているように。
 やがて彼は、目当てのものを見つけたのか、それを視界に入れてにんまりと唇を歪めた。

「……そこのお前だ、小童」
「…………!」

 バッ、と一斉に、皆の視線がそちらに集まる。コートの上の獅子がロックオンした憐れな獲物は、嫌そうに顔を歪めてそこに立っている。
 なびく金髪、顰められたそれですらひどく整った顔。じゃらつくアクセサリー。両手をズボンのポケットに突っ込んで、ラケットを脇に挟み、観客席の上方から、コートに立つ平等院を見下ろしている。

「降りて来い小童、あの時の続きだ」

 皆は知らない。Aと平等院の間に、どんな因縁が生まれてしまっているのかなど。しかしそれでも、なにかとてもよくない状況であるということだけはわかる……!
 平等院は危険な男だ。生半可な気持ちで挑んでいい相手ではない!
 Aに、平等院との試合はさせられない。


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敬服せよ、→←愛シ、愛シト云フココロ。 彼そ誰



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角砂糖(プロフ) - 美琴さん» ありがとうございます!!(大声) (2020年3月11日 19時) (レス) id: 651af228bd (このIDを非表示/違反報告)
美琴 - 好きです(突然の告白) (2020年3月9日 20時) (レス) id: 0419c563a9 (このIDを非表示/違反報告)
角砂糖(プロフ) - 蘇芳さん» この作品を愛していただき本当にありがとうございます。この話の続編は、今の所はあまり考えていません。今非常に私生活が忙しく、それが一段落したら何か書きたいなとは思っていますので、いつになるかわかりませんが、もし気が向けばお付き合いいただけると幸いです。 (2020年1月30日 4時) (レス) id: 651af228bd (このIDを非表示/違反報告)
蘇芳(プロフ) - とても面白くて一気に読んでしまいました!もしもあるのなら続編楽しみにしています。これからも頑張ってください! (2020年1月24日 20時) (レス) id: ec6c109e68 (このIDを非表示/違反報告)
ピット☆(プロフ) - 角砂糖さん» そうです!覚えていてもらえて嬉しいです!!予定があるかはわかりませんが次の作品をお待ちしてます! (2019年11月20日 1時) (レス) id: f631e9f6d4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:角砂糖 | 作成日時:2019年3月18日 21時

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