【スクランブル・エッグ】 ※一話完結 ページ5
桃、水色、黄色、淡いパステル色で飾られた神樹を見て、つい笑顔がほころぶ。今日はイースター。カラフルに彩られた卵を見つけて、数の多い方が勝ちというゲームを少年隊の中で開催しており、子どもたちは皆探し回ったり、見つけた卵を見せ合ったりしている。わざわざこの日のためにここまで準備するだなんて、なんて思っても、イベント事にこれだけ気合を入れる人間など1人しか思いつかない。
「やっほーくろちゃん!」
「なあに?」
「イースター、楽しんでる?」
「楽しいよー!」
なんて本心で思っているわけがない。こんな子ども騙しの遊び、楽しくもなんともない。けども、まあ、かわいらしい色で塗られたイースターエッグは正直に言っていいと思う。派手すぎないカラーといい、同系色でない桃と水色で描いている卵は、綺麗である。
「それならよかったよ」
と笑いながら手を振る叶音お兄さまを見て罪悪感が湧いた。ああなんか、振り返す手が重い。彼が見えなくなった後、ぶらりと手を下げた。もう、帰ろう。他の少年隊の子たちがエッグハントに夢中になってる中、くろは1人だけ自分の部屋に戻った。
部屋に戻った後、やるせなくなって、つい手に力がこもってしまった。ぽろぽろとイースターエッグの破片が床に零れ落ちる。ぐちゃぐちゃになったイースターエッグを机に置いてしばらくの間、1人の時間を過ごした。
数時間後、寄宿舎から出るとまた叶音お兄さまに会った。
「あれ? くろちゃん、エッグは?」
「あのねー、えっとね、お友達にあげちゃった……」
えへへ、と笑いながらごまかす。まさか握りつぶしてしまっただなんて、言えない。知らなければ、きっと彼もなんとも思わないだろう。ぐちゃぐちゃになったエッグが、今のくろの気持ちみたいだった。どう接すればいいのかわからない。ぐっちゃぐちゃだ。
*
東雲 祀さん宅の泉那叶音くんをお借りしております。
7人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
円藤 マメ(プロフ) - 菜の葉さん» ありがとうございます:) 褒められて照れる。リンク記載の件把握しました、よろしくお願いします!。 (2019年7月19日 19時) (レス) id: 3241387696 (このIDを非表示/違反報告)
菜の葉(プロフ) - 文才がヤバいですッ! クロちゃんの想いとか感情とか、すごい伝わってきます…! こちらの作品を、『リンク集』のところに載せさせていただきますね! (2019年7月19日 18時) (レス) id: 8971b2ec5c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ