第二十七話 屍に背を向け、下山する 巫兎視点 ページ30
私は鬼の背後からそっと近づき、刀を振り上げると
「歓迎してくれてありがとう。
そして、さようなら」
と言いながら、静かに鬼の頸を斬った。
鬼は大きく目を開いたまま、塵となり一瞬で消えていった。
その様子は呆気なく、彼の人生がいかに短かったのか物語っていた。
不死川さんと稽古してて良かった。
そうじゃなかったら、ここまで早く片付けられなかった。
あの鬼の血鬼術からして、操り人形の鬼は他にいる。
急いで行かないと、村田さんがもたない。
私がその場から離れようとすると、そっと肩を叩かれた。
「はっ! 」
「あら、そんな警戒しなくて大丈夫ですよ」
「……胡蝶様。
そうですか、柱の方が援護に」
「えぇ。
それにしても、先ほどまでここに鬼の気配があったのですが……。
もしかして、巫兎さんが倒しましたか? 」
「はい」
「さすが、不死川さんの継子ですね!
ここは私に任せて、下山してください」
「ですが……」
「一見巫兎さんは大怪我はしていませんが、
とっくに体力の限界を超えていると思いますよ?
なので、下山してください」
言われてみれば、体が鉛のように重い気がした。
胡蝶様の有無を言わさない笑顔に、私は頷くことしか出来なかった。
「わかりました。
ご存知かもしれませんが、この山には鬼が群れて生息しています。
おそらく束ねている物は十二鬼月かと」
「ありがとうございます、それでは」
そう言うと、胡蝶様はまるで蝶々が飛び立つように静かにその場から消えた。
さすが、柱だ。
気配を全く感じなかった。
村田さんの様子だけ確認したら下山しよう、どうせ通り道だし。
村田さんと解散した場所へ戻ってみると、そこに村田さんの姿はなく、
亡くなった隊員たちが無造作に転がっているだけだった。
まさか、殺された?
でも、村田さんの死体はない……下山したのか?
いや、待って、もう操られてない。
全て糸が消えてるし、小さい蜘蛛もいない。
村田さんが倒したのかも。
まぁ、生きてそうだから良かった。
早く下山しよう、人の死体が転がってるところに長居したくはないし。
私は最後にもう一度仲間の死体を一目見ると、
背を向けてそのまま下山した。
その頃村田さんが全裸になって山の中で凍えていたことを知ったのは、
それから少しした後のことだった。
*作者より*
最近アマビエ飴を大量購入した庵原です。
やっと那田蜘蛛山編が終わりましたね。
次は蝶屋敷編、もうそろそろで竈門炭治郎立志編が終わりそうです。
これからも何卒、この作品をよろしくお願い致します!
第二十八話 お見舞い 炭治郎視点→←第二十六話 鬼の家族 巫兎視点
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