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第二十一話 那田蜘蛛山 巫兎視点 ページ24

目の前にそびえ立つ山は、とても大きく怪しい雰囲気をまとっていた。
その場にいる誰もが山から感じる威圧感に圧倒され、眺めることしかできなかった。

何、この山の気配は。
まるで山全体が鬼の根城のような……。
胃が捩れるような禍々しい気配がする。

「みんな、こんなところで立ち止まらずに行こう!
 大丈夫だ、こっちは十人で相手は一匹だ。
 怖がることなんてないさ! 」
「そ、そうだな」
「お、俺は怖くないぞ! 」

黒沢の言葉でみんなが勇気を出し、互いに鼓舞しあった。

いや、相手は一匹じゃない。
一匹で出せる気配じゃない、これは。
でも、鬼は群れないはず。

「志那戸辨さん、行こう」
「え、えぇ」

私が物思いにふけていると、村田さんに声を掛けられ前をみてみると、
他の隊員はとっくに歩き始めていた。

「待っていてくださり、有難うございます」
「あ、いやいやそんな。
 何か引っかかることでもあるのか? 」
「まぁ、本当に相手は一匹なのかと……」
「でも、鬼は群れないだろう? 」
「そうなんですよ」

二人とも結論が腑に落ちないまま、山の中へ入っていった。
中へ入ると、威圧感は一層まし、体がとても重く感じだ。
入ってすぐ攻撃されるわけでもなく、全員が不思議に思っていると、
一人の隊員が突然立ち止まった。

「全然、鬼が居ねぇじゃねぇか。
 こんな大人数じゃ効率が悪い。
 俺は先に一人で行かせてもらうぜ」
「お、おい、待て!
 どこに鬼が潜んでいるかわからないんだ! 」

その隊員は黒沢の忠告を聞かずにどんどん山奥へ入っていった。

「はぁ、後で無事生きて合流できることを願おう。
 それにしても彼の言う通りだ。
 ここまで一匹も鬼と出くわしていない。
 誰か見たものはいないか? 」

彼の質問に皆は首を横に振ることしか出来なかった。
誰も、見ていないのだ。
微かに鬼の気配は感じるのに、姿を捉えた隊員は誰もいない。
そして鬼が攻撃を仕掛けてくる様子もない。
まるで、虫が蜘蛛の巣に引っかかるのをそっと待つ、蜘蛛のように。
しばらく歩くと、一人の隊員が急に刀を鞘から抜いた。
その音で皆一斉に刀を構え、周囲を警戒した。

どこ? 鬼は一体……

するとその隊員がいきなり他の隊員を攻撃し始めた。

は!? 何やってるの!

「お、おいどうしたんだ! 」

彼の行動に続くように次々と他の隊員も互いを斬り合い始め、
もはや誰が味方なのか分からなくなっていた。
その光景はとても酷く残酷で、見るに耐えなかった……。

第二十二話 操り人形 巫兎視点→←第二十話 団体任務 巫兎視点



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庵原史穂(プロフ) - 西村莉唯(りあ)さん» 西村莉唯様、温かいお言葉ありがとうございます。ご期待に添えるようこれからも精進して参りますのでよろしくお願い致します♪ (2022年3月6日 17時) (レス) id: 0038db6d5e (このIDを非表示/違反報告)
西村莉唯(りあ)(プロフ) - 更新したら私即見ます!なので頑張ってください! (2022年3月6日 16時) (レス) id: 929c6fdeb8 (このIDを非表示/違反報告)
庵原史穂(プロフ) - 夏美さん» ありがとうございます! (2022年2月19日 22時) (レス) id: 0d9f41f564 (このIDを非表示/違反報告)
夏美(プロフ) - 更新頑張ってください! (2022年2月19日 22時) (レス) id: 5adf9ec04a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:庵原史穂 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2021年12月22日 21時

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