第十五話 紅のオオカミ・後編 巫兎視点 ページ18
鬼は獲物を捕らえることができなかった己の手を見つめると、猛烈に叫び始めた。
「ない、ない、ない!!
俺の、血が!? 肉が!?
ゔぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!! 」
その姿はまるで獲物に飢えたオオカミのようで、大きく見開いた目は真っ赤な血涙に染まっており、
あるはずの瞳孔が見えなくなっていた。
動きは単純なはずなのに、巫兎は攻撃を避け切るのに精一杯だった。
このまま、夜が明けるまで待つなんて絶対に嫌だ。
腕さえ切り落としてしまえば。
でも、近づいたら一瞬で串刺しに…….
待って、動きが単純なら陽動で惑わしやすいんじゃ?
私は刀を構え直すと、鬼の周囲を走りながら攻撃を地面や瓦礫に向かって次々に放った。
その衝撃で周囲は土埃で視界が悪くなった。
先ほどまで私の姿のみ追っていた鬼は、土埃によって視界を遮られ動かなくなった。
成功した!
このまま土埃が消えないうちに……!
私は地面を蹴って鬼の頭上まで一気に飛び上がると、
空中で体を拗らせ先程よりも刀に力を込めて刀を振り上げた。
「全集中! ・風の呼吸、
すると、私の刀は鬼の両腕を粉々に切断した。
鬼は急に現れた獲物に驚き攻撃しようとしたが、
すでに私によって腕が切断されたことに気づかなかったのか、
傷口から流れる血のみが飛び散った。
汚いわねぇ、飛び散らかさないでよ。
今のうちにさっさと鬼の頸を!
「全集中・風の呼吸
鬼が両腕を再生しないうちに、私は鬼の足元へ一気に近づき、
体を捻りながら斜め下から勢いをつけて斬り上げた。
私の刀は見事鬼の頸を貫通し、撥ねられた頸は遠くへ飛んだ。
鬼は頸を斬られたことに悔しいのか、獲物を喰えなかったことが悲しいのかわからないが、
大粒の血涙を流しながら、喚き始めた。
「畜生、畜生!
なんで、なんで俺がこんな目に遭わなきゃいけないんだ!!
寒い、寒い、寒い!!
誰か温かいものを、血を、肉を、食べ物をくれぇぇ〜。
最期くらい、お腹いっぱいに、なりたかった……」
そういうと、鬼は静かに塵となり消えていった。
「お腹が空いたからって、何をしてもいい訳ないでしょ……。
ほんと、情けない。
さて、後始末は隠に任せて帰ろう。
村人たちから問い詰められたくなし」
私はもう一度振り返ると、闇夜に向かって消えていった。
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庵原史穂(プロフ) - 西村莉唯(りあ)さん» 西村莉唯様、温かいお言葉ありがとうございます。ご期待に添えるようこれからも精進して参りますのでよろしくお願い致します♪ (2022年3月6日 17時) (レス) id: 0038db6d5e (このIDを非表示/違反報告)
西村莉唯(りあ)(プロフ) - 更新したら私即見ます!なので頑張ってください! (2022年3月6日 16時) (レス) id: 929c6fdeb8 (このIDを非表示/違反報告)
庵原史穂(プロフ) - 夏美さん» ありがとうございます! (2022年2月19日 22時) (レス) id: 0d9f41f564 (このIDを非表示/違反報告)
夏美(プロフ) - 更新頑張ってください! (2022年2月19日 22時) (レス) id: 5adf9ec04a (このIDを非表示/違反報告)
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