第十一話 祖母の形見 巫兎視点 ページ14
「伝令、伝令カァ!
志那戸辨巫兎ニ初任務ジャァ! 」
……タイミング、良すぎでは?
とうとう来たのね、この時が。
先ほどまで和んでいたその場の雰囲気が、一気に張り詰めたものになった。
私は一度唾を飲み込むと鎹鴉の言葉に耳を傾けた。
「西ノ村デ鬼ガ暴レテイル!
毎晩、毎晩、人ガ喰イ殺サレテイル!
タダチニ、西ヘ向カヘ! カァァ! カァァ! 」
私が鎹鴉からの情報を頭の中で整理していると、師匠が私の肩を叩いた。
「さ、考え事は行きながらするんだ。
はよ隊服に着替えて、準備せぇ。
一刻も早く、被害がもっと出ないために」
「わかりました、着替えてきます」
私は師匠の言葉にハッとすると、急いで隊服に着替えに行った。
師匠の言う通りよ。
考え事なんか行きながらやればいい。
単純なことなのに、どうして。
もしかして、緊張してる?
着替えて師匠の元に戻ると、師匠は驚いた顔で私を見た。
「お前さん、袴にしたのかい?
最近、女子にはスカートが人気のようじゃが……」
「わざわざ必要以上に肌を見せる必要はないかと。
……それに、この方が慣れていますので」
「確かに、巫兎はそうじゃろうな。
ほれ、これもし良かったらきて行きなさい。
せめて私からの祝い品じゃ」
師匠から手渡されたものには見覚えのあるものだった。
「どうして! あんなにボロボロになっていたのに……」
「大切なんじゃろう?
わしの友人に頼んで繕ってもらったんじゃ」
私の手には、
亡き祖母がそこにいるような気がして、少し切なくなった。
「まぁ少し、戦いやすいように丈とかは変えてもらったんだが……。
どうだ、気に入ってくれた? 」
「はい、とても。
ありがとうございます、師匠。
鉄島さん、私の刀を打ってくださりありがとうございます。
それでは、行ってまいります」
「あぁ、気い付けてのぅ」
「巫兎、お前ならやれる。
鬼の頸を討ち取ってこい! 」
私は二人に励まされながら、家の敷居をまたぐと、
二人に向かって深くお辞儀してから静かに西へ向かって歩き始めた。
緊張してる場合じゃない。
早く夜までにつかないと、新しい犠牲者が出る。
あの日、私は心に誓った。
『私を邪魔する奴は、一匹残らず地獄に葬ってやる』
だから、私は……!
私は決意を固めると、一気に走り出した。
西の方へ、己が進むべき道の方へ。
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庵原史穂(プロフ) - 西村莉唯(りあ)さん» 西村莉唯様、温かいお言葉ありがとうございます。ご期待に添えるようこれからも精進して参りますのでよろしくお願い致します♪ (2022年3月6日 17時) (レス) id: 0038db6d5e (このIDを非表示/違反報告)
西村莉唯(りあ)(プロフ) - 更新したら私即見ます!なので頑張ってください! (2022年3月6日 16時) (レス) id: 929c6fdeb8 (このIDを非表示/違反報告)
庵原史穂(プロフ) - 夏美さん» ありがとうございます! (2022年2月19日 22時) (レス) id: 0d9f41f564 (このIDを非表示/違反報告)
夏美(プロフ) - 更新頑張ってください! (2022年2月19日 22時) (レス) id: 5adf9ec04a (このIDを非表示/違反報告)
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