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第九話 家路は冷たい 巫兎視点 ページ12

私は炭治郎に短く別れの挨拶を告げると静かに家路についた。
七日間も鬼の牢獄の中に居たせいか、久々の外の空気は私にとっては少し冷たかった。

 はぁ……、あの暴れ馬のせいで温存していた体力が全部持ってかれた。
最悪。
よくもまぁ、あんな騒げる体力あったわね、あの馬鹿は。
なんか、だんだんイライラしてきた。
もう、忘れよう。
どうせ、二度と会うことなどないのだから。
今は師匠の元に戻ることだけを考えよう。
このままのペースじゃ、日が暮れそうだし。

 私はもう一度深いため息をつくと、顔を上げさっきより少し早く歩き始めた。
しかし、七日間鬼と戦い続けた体では色々と限界で、
日が沈みすっかり暗くなった頃、私はようやく師匠の家に着いた。
当然、家の中は静まり返っていた。

 はぁ、結局こんな時間になっちゃったか。
師匠、もう寝てるだろうな。
……なんて顔をして家に入ればいいか。

 家に入るタイミングがわからず、家の扉に手をかけたまま立っていると、突然扉が開いた。

「え? 」
「……はぁ、ったくお前は。
 そんなふうに家の前に立ってたら怪しまれるだろう。
 わしなんか一瞬、幽霊かと思ったぞ?
 さ、はよ家ん中入れ。 体が冷え切る前にな」

 師匠のあまりにも普段通りすぎる態度に困惑した。

「し、師匠……」
「ん? なんだい? 」

 師匠は、私に背を向けたまま返事した。

「……帰りが遅くなってしまいごめんなさい。
 ただいま、戻りました」

 私がそういっても師匠はこちらを向かず、肩を震わせながら立っていた。

「……体の汚れを、落としてきます」

 そう言いながら顔を下に向けたまま師匠の横を通り過ぎると、

「待ちなさい、巫兎」

 と言われ振り返ると、勢いよく抱きしめられた。

 早っ!
帰ってきてすぐなのに、もう稽古なの?

「よくやった……よく、やった。
 よくぞ生きて戻ってきたな、巫兎。
 なかなか帰ってこなくて心配したんだぞ?
 最初、本当に幽霊かと……思ったんだぞ?
 本当に……よかった、本当に…… 」

 私の着物の肩はじんわりと温もりのある涙で濡れていった。

「……ごめんなさい、心配をかけて」
「巫兎、違うぞ。
 こうゆう時はなぁ、“有難う” ていうんだぞ」
「あ、有難うございます」
「あぁ、それでいいのだ。
 おかえり、巫兎。
 そして選別通過、おめでとう。
 さすが俺が見込んだだけあるなぁ!
 これで、お前も一人の鬼殺隊員だ」

 久しぶりの人の温もりは、自分を認めてくれたようでとても暖かかった。

第十話 鉄島鋼助 巫兎視点→←第八話 藤の花の下でもう一度・後編(続き) 炭治郎視点



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庵原史穂(プロフ) - 西村莉唯(りあ)さん» 西村莉唯様、温かいお言葉ありがとうございます。ご期待に添えるようこれからも精進して参りますのでよろしくお願い致します♪ (2022年3月6日 17時) (レス) id: 0038db6d5e (このIDを非表示/違反報告)
西村莉唯(りあ)(プロフ) - 更新したら私即見ます!なので頑張ってください! (2022年3月6日 16時) (レス) id: 929c6fdeb8 (このIDを非表示/違反報告)
庵原史穂(プロフ) - 夏美さん» ありがとうございます! (2022年2月19日 22時) (レス) id: 0d9f41f564 (このIDを非表示/違反報告)
夏美(プロフ) - 更新頑張ってください! (2022年2月19日 22時) (レス) id: 5adf9ec04a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:庵原史穂 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2021年12月22日 21時

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