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とにかく盗聴器を外したりなんかしたら余計に突っかかられる。
そう思って盗聴器はそのままに、一度自室に戻ることにした。
・
部屋にたどり着いた私はぼふりとベッドに倒れ込んだ。
ため息をつきそうになったけど、何となく気が引けたのでやめた。
袖につけたままの盗聴器を眺める。
これ、十中八九阿笠博士作だよね。
すごいコンパクトだな。
集音範囲どのくらいだろう。呟く程度の音なら拾われないかな?
……ていうか私部屋で長々と独り言とか言わないし、別にコレつけたままでも問題ないのでは?
それに気づいた瞬間、急に心が軽くなった。
人は安心すると眠気に襲われるものだ。……え?私だけ?
まあ良いんだけど、要するに、私は今とても眠い。
・
(コナン視点)
灰原の証言を受けて一も二もなく飛び出してしまったものの、よく考えたら俺はメルローの顔を知らない。
東洋系の顔立ちで黒髪の女性なんて、この日本じゃ珍しくないしむしろ主流だ。
さっき対峙した女性がメルローだなんて根拠はまったくなかった。
(安室さんでも連れて来るんだったな…)
少し後悔したものの、盗聴器は仕掛けることができた。
これで少しでも情報が手に入れば良いのだが。
そう思いながらレストランに戻ると、もうみんな食事を終えたようだった。
歩美や光彦に何処へ行っていたのかと聞かれたが、知り合いを見つけた気がして、と適当に誤魔化す。
しかし、それでは流してくれない大人が一人。
「また何か掴んだのかい?」
にこりと俺に笑いかけたのは安室透だ。
昴さんも何か察した様子ではいたが、流石にこの男の前で俺と込み入った話をするつもりはないらしい。
阿笠博士と一緒にレストランから出て行くのが見えた。
「…ねえ、安室さん。」
周りに誰もいなくなったのを確認してから安室さんを小声で呼ぶ。
すると俺の意図を正しく汲み取った安室さんは、屈んでこちらに耳を寄せた。
「メルローって……肩まで伸ばした黒髪で、眼鏡かけてる、ちょっと口調がキツめの人?」
「……え?」
「さっき会ったんだ、名前を聞こうとしたけどはぐらかされちゃって…」
突如安室さんは勢いよく俺の両肩を掴み、切羽詰まった顔で叫ぶ。
「彼女は何処に!?」
俺は勢いにのまれて、とっさに言葉が出てこなかった。
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作者名:しま | 作成日時:2018年4月29日 21時