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私のもとへと駆け寄ってきたのは案の定コナンくんだった。
いつも通り事件の捜査をしてくれているらしい。
頼もしいことこの上ない。ぜひパパッと解決してくれ、私は一秒でも早くこの場から立ち去りたいんだ。
私や相手様に二、三ほど質問したコナンくんは、顎に手を当て考え込むような仕草をする。
私は相手様と会話しながらその様子をじっと眺めていた。
(頑張れコナンくん、この事件を解決できるのは君だけだ…!)
いや、コナンくんだけというのは語弊があるか。
探り屋としての能力を買われ、組織でコードネームを与えられたバーボンこと安室さんも、並外れた推理力の持ち主だ。
だからコナンくんと安室さんが連携して事件を紐解いてくれれば、きっと早々に真相にたどり着く……はずなんだけど、あれ?
そういえば安室さんどこに行った?
「あ、こっちですよ。」
「!?」
店内に推しの姿が見えない、と思った瞬間に背後から話しかけられる。
パッと振り返ると思いの外近くに安室さんが立っていた。
私が露骨に驚いた顔をすると、安室さんは苦笑を浮かべて「驚かせてすみません。」と謝る。
「お久しぶりです。挨拶をするなら今しかないと思って。」
今しかない?何故?
と思ったが、いつの間にか私の隣にいたはずの相手様がいなくなっていることに気づいた。
どうやら場所を変えてさらに聴取を受けているらしい。
なるほど、男が寄ってくると誰でも彼でも噛み付くあの人がいない今しか、落ち着いて話せる場面はないということか。
「え、ええ、お久しぶりで……」
「あ、その口調は結構ですよ。コナンくんから事情は聞きましたので。」
「えっ?そ、そうですか……えっアレを信じてくれたんですか?」
コナンくん喋っちゃったのか!
ま、まあ話しても信じてもらえないだろうからって理由で今までお口チャックをするよう頼んでいただけなので、信じてもらえたのならそれで良いのだが。
しかし本当にあれを信じてくれたのか?
前世思い出したせいで今世の記憶がぶっ飛び気味、という荒唐無稽なお話を、なんの根拠もなく…?
私が若干疑いながら尋ねると、安室さんはニッコリ笑って「はい」と応えた。
う、うわあ…!安室さんって本当に天使だったんだ!
あんな話を素直に受け入れてくれるなんて
「コナンくんから公園の動画を見せてもらいまして。」
「コナンくん!?!?!?」
慈悲などなかった。
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作者名:しま | 作成日時:2018年4月29日 21時