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私の今世紀最大の驚き顔を見られてしまい、とっさに目をそらす。
え?そっくりさん?
んなわけあるかベルモットや。
脳内では二秒で答えが弾き出された。
あそこまで完璧に佐藤千佳子の顔を模倣できる人物なんぞ、ルパンかキッドかベルモットくらいだ。
安室さんにくっついているところを見るとあれはベルモットで間違いなさそうだが…それはまずい。
私と目が合ったベルモットはきっと疑念を抱いたはず。
佐藤千佳子…つまりメルローの顔を見て心底驚いた、この私に。
私のことをメルロー本人か、少なくともその事情を知る関係者かぐらいには疑っているだろう。
本当にやばい。相手様を連れて退散しなくては…
「あれ?篠崎さんじゃないですか。」
あむぴィ!!(マジギレ)
てめーなんでこういうときに限ってそんなサラッと話しかけてきやがるアッでも好きかっこいい。ごめん許す。超許す。
ベルモットが安室さんに「知り合いなの?」という目線を向けて探っていることなんてこの際気にしないよ。
「あら安室さん…」
「Aさん、誰だい彼は?」
お前はさっそく名前呼びか。
私の名前呼ぶのなんてコナンくんと父ぐらいだから呼ばれるとビビる。
安室さんのことは「以前親しくさせていただいた方ですわ」程度の紹介で切り上げ、それ以上は言わないでおいた。
元彼ですなんて言ったらベルモットから向けられる視線がさらに酷いことになる。言わぬが花。
それにしても、安室さんから向けられる視線がなんだか妙に生温い気がする。
以前までの探るような気配は感じない。ただ憐憫の情は感じる。何故だ。
私が彼の視線の意図を測りかねていると、小五郎さんがスッと席を立ち「お美しい…」と呟いた。
「え?」
「お嬢さん、ここのバーは初めてですかな?」
「え、ええ…」
「さすれば戸惑うことも多いでしょう。いかがかな?この毛利小五郎と今夜…」
「なんだアンタ!この人は僕のフィアンセだ、気安く触るな!」
あんたも十分気安いですう。
そもそも先ほどの彼の告白に頷いた覚えはない。
コナンくんも呆気に取られたような顔をしている。
うん。私もよく分からんよ。
とにかく都合よく小五郎さんと相手様が喧嘩してくれたので、バーを立ち去る口実もできた。
私が相手様の腕を引きさっさとバーを出ようとした、その瞬間。
バタンッ!!
バーの最奥で、男性が苦しげな表情とともに倒れ伏した。
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作者名:しま | 作成日時:2018年4月29日 21時