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(コナン視点)
この人がメルロー語りをやめないなら俺も腹を括ろうと、オレンジジュースをズコココと飲み干してから安室さんを見た。
こうなったらノロケを聞くことになったとしても文句は言うまい。
それに相応する有益な情報を吐いてもらうまでである。
「メルローの足取りに関して、何か掴んでるの?」
「いや、あの日から姿を消したままだよ。…ただ、ちょっと厄介なことになった。」
「厄介なこと?」
俺が首を傾げると、安室さんは俺のスマホをこちらに返しながら少々険しい顔をする。
「うん。実は僕、メルローの捜索に関わるなと命令されてしまって。」
「えっ。だ、誰に?」
「ジンだよ。彼にもベルモットにも、お前はこの任務に絶対に私情を挟むとお墨付きを貰っちゃってね。」
だからメルローに関する情報は、バーボンには一切降りてこなくなったのだと言う。
なるほど確かに厄介だ。
仮に今この瞬間、メルローが組織の連中に追われていたとしてもこちらは気づかないということになってしまう。
「だから今一番手っ取り早い方法は、彼女の父親を見つけることなんだけど…」
「うん…あの電話の内容を考えれば、メルローの父親は彼女に発信機か何かを持たせてたみたいだしね。」
『あの電話』とは勿論、俺と安室さんが船の中でメルローを盗聴していたときの例の通話である。
メルローの「ストーカーみたい」や「居場所は把握してるんでしょ」という言葉、あとは彼女の声音から読み取った感情などを組み合わせて推理した。
つまり父親を特定しメルローの位置情報を聞き出せば、容易に彼女を発見できるということだ。
「それで、父親の情報は掴めたの?」
「ああ…父親の名字が『沖井』だということまではね。戸籍は照会済みだけど、特に引っかかる人物もいないから、現在は偽名を使っているのかもしれない。」
そりゃそうだよな…
俺の周囲にも偽名を使ってた人が溢れかえっているし。
ジョディ先生も赤井さんもキールも、目の前のこの男だって偽名持ちだ。
メルローだって「佐藤千佳子」と名乗っていたし。
Xデーまでは残り三日。
なんとか、耐え切ってくれると良いのだが。
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作者名:しま | 作成日時:2018年4月29日 21時