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(コナン視点)
久しぶりにAさんと話した日から一夜明け、俺は蘭や園子とともにポアロへと足を運んだ。
「いらっしゃい!」と出迎えてくれたのは何だか機嫌が良さそうな梓さんだ。
店の奥では安室さんが俺たちに背を向けて他の客に給仕をしている。
「梓さん、なんか楽しそうですよね…?」
「何かあったんですかー?」
蘭と園子が不思議そうに尋ねると、梓さんははにかむような笑顔を見せながら「楽しいっていうか…」と声を潜めて言う。
「今日は安室さん、なんだか調子良いみたいで。」
俺たちはその言葉で、一斉に安室さんの方を見る。
ちょうど給仕を終えてカウンターに戻るところだった安室さんは、俺たちの視線に気づいてきょとりと首を傾げた。
その表情にはいつもの余裕が戻ってきており、確かに梓さんの言う通り調子が良さそうに見えた。
「最近ちょっとお疲れ気味みたいだったでしょ?だから気になってたんだけど…」
「ふーむ……あっ!もしかして!」
園子が唐突にポンと手を打って、安室さんへ輝くような笑顔を見せる。
「千佳子さんとの仲に進展があったとか!?」
園子の言葉に、蘭と梓さんがハッとした様子で互いの顔を見た。
そして園子と同様に顔を輝かせ安室さんに期待の眼差しを向ける。
それに対して、俺は内心で冷や汗が止まらなくなった。
今、安室さんにその話はタブーだってのに…!
園子たちは四日前の豪華客船沈没で行方不明になった人物が「佐藤千佳子」であるという事実を知らないのだ。
俺が慌てて別の話題を出そうとしたとき、安室さんは予想に反して、嬉しさを抑えきれないといった風な笑顔を見せた。
「ええ、まあ……似たようなものです。」
……え?
途端に黄色い声を上げる女性陣をかき分けて、俺は安室さんのもとへ駆け寄った。
屈んでくれた安室さんにこそりと尋ねる。
「どういうこと?メルローは四日前に……」
「その話はまた後で。でもこれだけは先に言っておくよ。」
安室さんは心底嬉しそうな顔で、
「彼女、生きてた。」と囁いた。
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作者名:しま | 作成日時:2018年4月29日 21時