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そして、今に至る。
いつの間にか橙色に染まった空を仰ぎながらハードな三日間に思いを馳せていると、もはや懐かしく感じる声が私の耳に届いた。
緩慢な動作で下を見ると、私の傍らにはスケボーを抱えたコナンくんが立っている。
「あ、コナンくんだ。」
「Aさん帰ってきてたんだ!今まで何処に行ってたの?」
「んっとね、海外旅行だよ。」
「それは知ってる。」
えっ知ってるの?
えー、参ったな。
コナンくんは私が何処へ旅行に行ったのか聞きたいようだが、そんなの答えられない。
だって海外なんて行ったことないし。
困った私は、ええいままよと投げやりな気持ちで「イギリス」と答えた。
「へえー、イギリスの何処?」
イギリスの何処!?
「ロッ…ロンドン。」
「えっそこ僕も行ったことあるよ!」
だろうね!
私今、君がロンドン行ったときの話を思い出しながら喋ってるからね!
「じゃあベイカー街行った?シャーロック・ホームズの銅像あったでしょ?」
「うっうん、なんか予想以上にデカくてびっくりしたかな!」
「あっベイカー街に行ったんなら、ハイドパークとか大英博物館にも行った?」
「あ、た、確か……私、友達に引っ張り回されてたから……」
どんどん身を乗り出してくるコナンくんにたじろぎ、私も無意識に背をそらす。
そのとき、背中に痛みが駆け抜け私は思わず呻き声を漏らした。
「え?どうしたの?」
「あ、いや…」
「…もしかして背中痛めてる?」
ビンゴである。
三日前に私の部屋が吹き飛んだ爆発の余波で、廊下に背中を強かに打ち付けたときに、どうやら背中を痛めてしまったらしいのだ。
私は「旅行中にちょっとね、」と言葉を濁して立ち上がった。
「さあ、夕暮れ時だしそろそろ帰ろうか。家まで送るよ?」
「ううん、大丈夫!じゃあまたねAさん。」
コナンくんはそう言うと、スケボーに乗って颯爽と帰ってしまった。
「…なんかコナンくん、元気なかったな?」
私は夕暮れの中で首を傾げた。
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作者名:しま | 作成日時:2018年4月29日 21時