検索窓
今日:302 hit、昨日:236 hit、合計:1,781,487 hit

75 ページ28

(コナン視点)





あの豪華客船の沈没事故から三日が経った。


沈没“事件”ではなく“事故”。


爆発物の特定が出来なかったために、警察は事故として片付けざるを得なかったらしい。




さらにその“事故”の後、行方をくらました人物がひとり。




佐藤千佳子。


本名はフェリス・ナッシュ。


そして、コードネームはメルロー。




彼女は組織の重要機密を盗み出したMI6の諜報員だった。


……三日前までは。


彼女は何者かの術中にハマり、爆殺され、三日前の豪華客船沈没とともに海の底へと沈んだのだ。




消されたメルロー、証拠も残さないこの手口。


間違いなく、あの爆発は組織によって手引きされたものだった。




組織の目的は明白だ。


メルローによって盗まれた機密情報の削除。


そして裏切り者であるメルローの抹殺。


それを大胆な手口で成し遂げ、再び忽然と姿を消した。




(メルローが生きていれば、あと四日で情報が開示されるはずだった。)




その情報があれば、組織壊滅も夢ではなかった。




そうなれば、これまで組織に苦しめられ殺されてきた無辜(むこ)の人間への救済ともなり得るはずだったのに。


工藤新一の姿に戻ることが叶って、これ以上、蘭を悲しませることもなくなるはずだったのに。




……安室さんだって、あの絶望を味わうことはなかったはず、なのに。




今はまだ海から死体が上がったとの情報は入ってこないものの、もしその一報が安室さんの耳に入ってしまったら、彼はどうなってしまうのか。


ただでさえ日に日に憔悴しているのが目に見えて分かるのだ。


これ以上、彼が無理をする姿は見たくないのだけれど。




遣る瀬無い思いでとぼとぼと夕暮れに染まった道を歩く。




米花公園を通りかかったとき、ふと顔を上げた。


その動作に、特に意味はなかった。


ただ何となく顔を持ち上げたというだけだ。




偶然顔を上げて、視線が向いたその先に、見覚えのある後ろ姿があった。




ふらりと公園に立ち寄る。


そこで、ベンチに座ってぼうっとしている女性に声をかけた。




「Aさん……?」




女性はおもむろに下を向き、俺と目を合わせ、きょとんと首を傾げる。




「あ、コナンくんだ。」




二ヶ月ぶりに見る、篠崎Aさんの姿だった。

76→←74



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (1108 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
2103人がお気に入り
設定タグ:名探偵コナン , 安室透 , 転生
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:しま | 作成日時:2018年4月29日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。