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(安室視点)
犯人が涙ながらに殺害動機を述べたそのとき、ドオンッと爆発音が響いた。
船体が少し揺れるほどの規模。
しかも爆発源は同じフロアらしかった。
瞬間、女性陣の悲鳴や警察の怒号が行き交う。
俺は無意識に彼女の姿を探した。
––––––––いない。
サーッと血の気が引いていくのを感じる。
……いない、いないいないいない!
佐藤千佳子が……メルローがいない!!
一瞬頭が真っ白になった俺の視界の端で、コナンくんが血相を変えて爆発があった方へと駆けていくのが見えた。
それを容疑者のひとりだった女子大生が抱き上げて止めている。
「離してッ!!」
「何してるの!?爆発があった方へ向かうなんて正気じゃないよ!!」
「でもっ、」
ドオンッ!!
再び爆発が起こる。
今度のそれは本当に近くで起こったようで、客室につながる廊下が瓦礫で塞がれた。
「くそっ…くそおっ、」
「す、すみません!コナンくんダメよ、危ないじゃない…!」
「いえ、その子のこと、どうか離さないようにしてあげてください!それから早く避難を……!」
コナンくんが暴れるのを蘭さんが必死に押さえている。
俺はその様子を見て、察してしまった。
ああ、きっと彼は、メルローが客室の方へ向かったのを見ていたのだ、と。
俺はふらりと歩き出す。
周囲はパニックを起こしながらも避難を始めていた。
そんな中でもこの足は、瓦礫で塞がれた客室への道に向かっている。
助けないと、彼女を。
メルローを助けないと、だって、彼女は……
『お前、なんでこんな暗い組織にいるんだっけ。』
『–––––––ぜんっぜん似合わなくない?』
そう言ってくれた、大切な……
「–––––––やっぱり私が殺って正解だったわね。」
すれ違いざま、囁かれた声。
目を見開いてバッと振り返る。
女子大生が、嘲笑うように口元を歪めて、いた。
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作者名:しま | 作成日時:2018年4月29日 21時