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安室さんはやはりレストラン入り口で待っていた。
私の到着に気づくと安室さんはふわりと笑って、おはようございます、と私の“名前”を口にする。
今の彼はあくまでバーボンではなく“安室透”であるという意思表示だろうか。
深読みのし過ぎかもしれないが、うん、深読み上等。
頭の切れる御仁と会話するときはそれくらい警戒して然るべきだと思う。
あと顔がキラキラしすぎです。
安室さんと並んでレストランに入ると、既に他の客がたくさんいた。
しかし早朝だからだろうか、昼ほどの喧騒は感じない。
安室さんと向かい合うようにして席に着いた私は、ふと誰かの視線を感じた。
後ろを振り返ってみると、こちらの様子を伺っていたらしい蘭ちゃんや園子様と目が合った。
…?
「あ、料理来ましたよ。」
「え、……はあ。」
あの視線はなんなんだ?
コナンくんがガン見してくるのはまあ分かるし昴さんの意識がこちらに向けられるのも当然だとは思うが、女子高生二人のあの目は一体…?
内心困惑していたが、安室さんは全く気にしていないようだった。
絶対視線に気づいてるのに。
……あっあーーなるほどねお前は視線向けられることなんか日常茶飯事だもんな!
……というわけでもないことは分かっているが。
釈然としないが、とにかくお腹が減ったのは事実だ。
そろそろ腹と背がくっつきそうなレベルに達している。
私は安室さんに促されるまま、料理を口に運び始めた。
・
(コナン視点)
「うわー…見てよ蘭!安室さんすっごく幸せそうな顔してるじゃない?」
「う、うん…千佳子さん全然気づいてないみたいだけど…」
蘭と園子は頬を赤く染めながら向こうのテーブル席に座る人物を見つめている。
勿論視線の先にいるのは安室さんとメルロー…佐藤千佳子さんだ。
安室さんが千佳子さんを待ってからレストランに入るつもりだということは察知できたから、俺もそうしようと思ったのだが、それは蘭たちによって防がれてしまった。
先ほどまでは何故止めるのかと疑問に思っていたが…
(そういうことか…)
園子は「色恋」と言っていたけれど、それもあながち間違いではないようだ。
あの二人の間にはとても穏やかな空気が流れている。
(もしかしたらあの二人、組織にいた頃は……)
そこまで考えたところで、思考を切り上げた。
これ以上の詮索は無粋だな。
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作者名:しま | 作成日時:2018年4月29日 21時