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私の少し前を歩く安室さん。




今の安室さんはバーボンとして私に接しているだろうから、当然あのディスクの話を持ち出されると思ったのだが、話し出す気配が全くない。


それどころか私の方を全く振り返らない。


これでは本当に私を部屋まで送るためだけに待っていたようだ。


私は訳がわからず、ただ無言で彼の背中を見つめていた。




結局何も話さないまま私の部屋にたどり着いてしまった。




(なんで話を切り出さないんだ?わざわざ接触しに来たくらいだから、何かしらのアクションはあるものと思ってたけど…)




“バーボン”の考えが読めず、私は真剣な表情で必死に頭を回していた。


つまり珍しくシリアス的雰囲気を醸し出していた。




……ぐう。




–––––––––それなのに、空気を読まない腹の虫。




「く……」




今このタイミングで鳴るか、貴様。


思わず悔しげな声を漏らす私を見た安室さんは、堪え切れない、といった風に笑った。




「ふ、っはは。まあこんな時間ですしね、小腹が空いてきましたか。」

「あーーーーうんそうだよもう寝る。」




めちゃくちゃ恥ずかしいわ!


ちなみに小腹どころではなく耐え切れないほど腹が減った。


しかも昼すら早めに食べたから実質十三時間ほど何も食べてない。




ええい中止だ中止!対バーボン会議はまた後で!!




これ以上暴れ狂う腹の虫を野放しにしておきたくなくて、さっさと部屋に入ろうとする。


するとクスリと笑った安室さんが「ねえ千佳子さん、」と話しかけて来た。




「明日の朝、朝食をご一緒させて貰えませんか。七時半頃に迎えに来ますから。」




朝早っ




……と思ったが、そういえば明日は八時半にまたあの場所に集まらなければならないんだった。


それに間に合わせるなら七時半には朝食を食べ始めないとギリギリになってしまう。




「…迎えは要らない。」




正直心臓がもちません。




私が拗ねた子供のようなことを言うと、安室さんはしょうがないなあ、と言いたげに苦笑した。




……妙に甘やかされている気がする。


何なんだろう、この態度?




私は自身に向けられる生温い視線が我慢できず、目を伏せてバタンと扉を閉じた。

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作者名:しま | 作成日時:2018年4月29日 21時

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