月を見つけて【ワンパンマン】

ーナンパ？ー ページ4

「コンクリートもどろどろだな。俺のコートが掛けてあったところも、原型ないな」

　戦いが終わった場所は、どろどろで店の原型がなくなっている。そして彼は全裸だ。私は視線を逸らす。未成年には刺激が強すぎる。

　それより、ヒーローが来ないことと、この人があの怪人を倒したことから、この人がすごく強いことがうかがえる。もしかしたら、サイタマさんより…いや、まさか。

「全裸で帰るわけにもねえし、協会に連絡とるか」
「あ、あの！」

　私は声を出した。彼の姿が目に入らないように、そっと視線を逸らしたまま。彼は一瞬私を探すが、すぐに目の前にいることに気がついた。

「こ、これ。わ、私の避難先においてあったので!」

　私は早くそれを隠してほしいので早口で言うと、その人は腑抜けた声で、それを受け取った。そしてそれを羽織ると、隠すように素早くボタンを閉めた。

「お前、最初から？」

「は、はい」

　今は違うが、元々裸だったことも有り、直視できない。私は自分のお財布から一万円を出して、彼に渡した。

「これ、交通費にしてください。お財布、逃げるときにコートから落としてしまって」

「いや、コートを持っていてくれただけでも十分だ。それに、財布の中も最低限の額しか」

　きっと彼は遠慮しているのだろう。そう思った私は、食い気味にお金を彼に突きつけた。

「遠征だったんですよね？」

(そこからもういたのか)

「ああ。それじゃあ、これはありがたく頂戴する。が、その代わりにお礼をさせてくれないか」

　一万円を受け取った彼は、そのまま私に紙を渡してきた。中にはメールアドレスと電話番号が書かれていた。これって、ナンパですか？

「俺はS級ヒーローのゾンビマンだ」

「S級ヒーロー!?」

　サイタマさん、私、すごいお友達ができました。

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