月を見つけて【ワンパンマン】

ー相続ー ページ29

「そういえば、施設の方はどうなりそうなの？」

「それが……」

　施設というのは、父が建てた障害者施設で、母もそこに入っているのだが。父がいなくなった今、相続をする人がいないらしい。

　ある程度金を集めれる顔の広さがあり、障害者施設のオーナーであることを名乗れる誠実さがなくてはならない。もちろん影の薄い私など論外である。

「その、1人だけ候補の方がいるんだけど」

「え、そうなの？」

　なんでもお父さんの知人のヒーローさんが、管理をしてもいいと応えているらしい。私はできることならばその話の船に乗りたいと思ったが、母は反対らしい。

「なんで？お父さんの形見のような場所なのに」

「そのヒーローが出した条件が、自分の弟子と貴方のお見合いなの」

　……この世には恋愛のことしか考えない奴しかいないのか。サイタマさん、本当にあなたは素晴らしかった。人を恋愛のさじで決める訳ではなく、私一人の人間として尊重してくれた。

　はぁ、サイタマさんに会いたい。

「母さん、私もいい歳です。そのお見合い、受けてたとうじゃないか」

　できることなら空気の読める弟子さんが、私とのお付き合いを考えずに施設を存続させるように師匠に直談判する。くらいしてくれますように。

ー見合いー→←ーただいまー

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