月を見つけて【ワンパンマン】

ー彼女ー ページ16

引き続きゾンビマンside

『もしまたお暇な時があれば、どこか出かけませんか？』

　実際会った時とは違う、存在感のわかる声にこれは一喜一憂する。そして、1分でも1秒でも長く電話したいと思っている。

「お前に合わせる」

『じゃあ、今週の土曜日などいかがでしょう』

　俺は予定の確認もせずに、了承する。すると、即答したことがおかしかったのか、クスクスといった可愛らしい笑い声が電話越しに聞こえる。

『私、こんな風に約束を交わすことがないので。なんだか、嬉しいです』

　それは遠回しに彼氏がいない、ということと受け取っていいのだろうか。そしてそれを俺に伝えるということは、少しは期待していいということだろうか。

「そうか」

『それじゃあ、今週の土曜日に。失礼します』

　電話が切れると、俺は落ち着いた風に席に着く。今思うと、名前を書くのを忘れた。

「彼女さんか？」

　バングが聞いてきたので、どう答えたらいいか迷う。助けた一般市民に惚れて、連絡先を交換したなど誰が言える。

「その人って可愛い？」

　それに乗ったように童帝が聞いてくる。老人が若い人の恋愛に首を突っ込むことはよくある話だが、童帝、お前はマセ過ぎていないか。

「まぁ、普通だ」

　俺はあえて彼女でないと否定しなかった。

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