名を付けるならなんと呼ぶ【ONEPIECE】 (ページ31)

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ふむ、と思考を回す。
確かに彼の提案は、無下にすることも出来ない。

私に施された治療の正確さや丁寧さ、的確な判断と対処だけでも医者としての能力は証明されている。それだけでも十分だが、多分彼は戦闘においても弱くは無いだろう。
深夜に裏町を1人で歩ける余裕がある。この会話の間も、私の間合いを正確に詠まれていた。更に能力者ときた。潜在能力は計り知れない。

ジョーカーの事を知っていた点を考えるとあながち嘘でも無いだろう。この国にいる間だけでも手を貸して貰えれば、私が背負うリスクはかなり減る。

信頼もできないが、利用する価値は十分。
目的を共にした相手と手を組めるなら渡りに船、というやつだ。

「……手を組む、ね」

“利用しろ”“手を組む”…上手いこと言われたものだ。それではまるで、先程までのAの方が感情的に、優しさでローを遠ざけたかのようだ。
その言われ方だと断る理由が無い。

「……わかりました。それなら受け入れます」

「良い判断だ」

ゆったりとした様子で、でもニヤリと笑って少し細められた目は、それなのに鋭い光を弱めない。
奥深くに何かがあると感じさせるのに、Aはそれを読み取ることは出来なかった。

矢張り野生の狼みたいな瞳をしている。強い意志を宿した瞳に射抜かれそうだった。

ローという男は、不思議な人だ。
一瞬感じた不快感はいつの間にか無くなっていた。
Aが引いた境界線を飛び越えて尚、嫌な感じをさせないのは、この冷たくも暖かくもない、絶妙な温度をした態度がそうさせているのだろうか。