名を付けるならなんと呼ぶ【ONEPIECE】 (ページ28)

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ジョーカー、と、そう唇を動かした瞬間、明らかにローの纏っていた空気が変わるのを感じた。

Aがそういう人の機微に気付きやすいのは、これ迄の人生でそういうのを必死に読み取ることで生き長らえて来たからである。
動物のように、本能で感じるのだ。

早々にこの場を離れてしまおう、そう思った。
こちらが何かを察したことすら相手に気取られてはいけない。意識的にゆっくりと瞬きをして、紅茶を飲み干す。

「助けて頂き本当にありがとうございました。何かこの恩をお返し出来れば良いのですが。生憎身一つで旅をしているので。……治療費くらいしか。」

「助けてやったのは気まぐれだ。金はいらねぇ。」

その言葉に、金銭で手打ちにしようとしていた内心を当てられたように感じてAは口を噤んだ。先程までは、お互いに引いた線引きに触れもしないように言葉を交わしていたのに、その小気味いい距離感が、突然飛び越えられる。

暗黙の了解で踏み込まなかったAの間合いに、ローはゆっくりと穏やかな歩みで入ってきた。

「この国で行われている“ビジネス”の計画をダメにすることが目的と言ったな。ならば手を貸す」

溜息をつきたくなるような脱力感に襲われた。
空になったカップを手持ち無沙汰に見下ろし、目を伏せる。