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まだじっと見つめるAに、産屋敷は何も言うことなく、ただ彼女がとる次の
行動を待っていた。不死川にとって、この時間は耐え難い物だった。
すると、ようやくAはきゅっと結んでいた口を開き、ある言葉を産屋敷に言った。
彼の顔を、その小さな両手で包み、そっと撫でながら。
「いたいのいたいの、とんでいけー」
「!」
さっきよりも目を揺らし、時が止まったような錯覚を覚えた産屋敷。
記憶のない鬼の子供が、自分の容体を気付き、自分を案じた。
産屋敷の心に、じわりと温かい何かが広がっていく。やがてそれは彼の心を満たし、そして
止まることなく、溢れ零れだした。
しかし、その顔もすぐにいつもの穏やかな顔に戻った。その顔は更に柔和であった。
産屋敷は頬に当てていた手を、彼女の頭に置き、撫でた。
すると撫でられていたAは彼を気に入ったのか、彼の膝の上に座った。
流石に不死川も黙り続ける訳にはいかなかった。
「オイA止めろ!
申し訳ありません、御館様。御無礼を······」
「いや、良いんだよ。実弥」
やんわりと、不死川を制止する産屋敷。その顔は慈愛に満ちているように見えた。
麗らかな陽射しが照りつけ、A達がいるところに影を作る。
何時ものように緊迫した空気は無く、ただ優しい時間がそこには流れていた。
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レミィ - 面白かったです!今コロナが流行っているので気を付けてください! (2020年3月9日 11時) (レス) id: edb0276662 (このIDを非表示/違反報告)
ぴっぴ - とても面白かったです!私もこんな小説が書けるようになりたいです! (2020年1月28日 16時) (レス) id: 113690dea7 (このIDを非表示/違反報告)
Kaede(プロフ) - 零さん» 本当ですね、すいません!ありがとうございます! (2019年10月17日 1時) (レス) id: 7af5a2cf72 (このIDを非表示/違反報告)
零(プロフ) - 「吾妻」じゃなくて「我妻」だと思います。間違ってたらすみません (2019年10月16日 23時) (レス) id: ac710565be (このIDを非表示/違反報告)
Kaede(プロフ) - 雪乃さん» 教えてくださりありがとうございます!すぐに直します!指摘コメントありがとうございました! (2019年10月13日 10時) (レス) id: 7af5a2cf72 (このIDを非表示/違反報告)
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