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それからも、暇だから、という理由で、
思成さんはたまに私の家に来た。
本当に何もしない。
寝ることはおろか、キスだって、何も。
「……思成さん、つくづくおかしな人ですね」
「悪酔いしてるね」
「まさか。でもさ、何なんですか、計画って。
てか、うち来すぎじゃないですか？付き合ってもないのに」
「そう？」
「そうですよ。私たちって何なんですか？
患者とカウンセラーですよね？ラーメン仲間じゃないんですよ」
今日は珍しくワインを開けた。
お酒は強くない方だ。
でも、意識ははっきりしている。
酔っている自覚は、あんまりない。
「まあ、思成さんから［男］感じると、引いちゃうんで。
やめてくださいね。何もないと思うけど」
「何もしないよ。仮にも患者でしょ？」
「ですよね、安心した」
「……煙草、吸ってもいい？」
「ベランダ空いてますよ。汚いかもだけど、それでもいいなら」
ありがと、と、煙草とライターを持って、
思成さんはベランダへと出ていった。
窓に室内の光が反射して、少し見えづらいけど、
思成さんが煙草を吸う後ろ姿が少し見える。
時折手を口元に持っていく。
外の夜景はお世辞にも綺麗とは言えない。
不意に、思成さんの後ろ姿が大きく動いた気がした。
「Aちゃん、ベランダありがとね」
「全然です」
戻ってきた思成さんの手には、携帯が握られていた。
他愛のない会話を装いながら、私に携帯を見せる。
［ストーカー被害遭ってない？］
その一文で、一気に酔いが醒めた。
「え……っと、どういうこと？」
「てかさ、これ面白い？」
［どうでもいい会話して。僕の携帯で話そう］
コクコクと頷いた。
いまだにどういうことかは理解できていない。
適当に、面白いよ、これとかどう？と返す。
ストーカーという言葉を見てから、心臓がバクバクして、
世間話の声が震える。
「これ？いいね。面白そう。今見てもいい？」
［Aちゃんのマンション見てる人がいた］
「いいよ。見よ。時間大丈夫？」
［偶然じゃない？］
「大丈夫。Aちゃんこそ、時間大丈夫？」
［僕が来る時毎回いるよ］
［だからずっと家来てたの？］
思成さんが、大きく頷いた。
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作者名：johnana | 作成日時：2022年2月14日 0時
