バイク屋のお友達2 ページ7
「ケンの洞察力はそこからなのかもなあ」
ケンは風俗店で育ち、お姉さんたちに囲まれて育ったこと。
そこでの暮らしはとても不幸なものではなく
その環境を受け入れて育ったことを聞いた。
人への洞察力が優れているのも、
気遣いがさりげなくできるのもそうだろう。
初めて会ったときに助けてくれたのも
そうやって育ったからかもしれない。
「Aは家族のこと何か聞いてないのか?」
「んー、病院の人から聞いたけど
記憶なくして倒れたって連絡はしたらしいけど
誰も病院に駆けつけてくれなかったし、
その後も連絡取れないからそんな家じゃないかなあ?」
「わりぃ。」
「いやいや、ケンは悪くないよ。
覚えてないからその辺も悲しくないんだよね〜」
覚えてないのは便利だ。
自分の以前いた環境を知らないから
家族が誰もお見舞いに来てくれなかったことも
その後、病院の人から連絡しても繋がらないことも
全部、なんだか他人事だった。
「たくましいのか、アホなのか」
そういうとケンはわたしの頭にポンっと手を置く。
ケンは時々こうやってわたしの頭に手を置く。
その後撫でるわけでもないが、わたしはこの手が
あったかくて嫌じゃなかった。
けど、その時のケンの顔はいつも悲しそうだ。
だからわたしはケンにその顔をやめて欲しくて
名残惜しい手を子ども扱いしないでよ〜と言って
笑いながら頭から避けるのだ。
「んーけど、人に作ってもらうご飯とかは憧れちゃうよね〜。なんだっけ、おふくろの味?」
記憶を無くしてから、自炊や外食はあるが
身近な人が作ってくれる温かいご飯を食べる機会はなかった。
「ご飯ちゃんと食べてる?」
これから客先に行く乾が
わたしを心配してか、準備をしていた手を少しとめ
どこから出てきたのか可愛らしい飴をくれた。
わたしはこの優しい2人と一緒にいれる
この場所が大好きだ。
記憶がないわたしにとって
この場所が1番大切な場所になっていった。
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作者名:もね | 作成日時:2021年7月24日 22時