愛して恋して ≪アバンティーズ 短編集≫

梅雨　*リクヲ ページ41

ポチャンと小さな音が鳴った

　キッチンでもお風呂でもトイレでもない

　その後続く音に、どうやら雨らしいと気づく

　気づけば模様替えが終わっていたソファーに座って少し眠そうなりっくんの方を見る

「りっくんりっくん」

　なにー？と声を上げるりっくんに私はこっちこっちと手招きする

　彼は重い腰を上げるように立ち上がり私の隣に立った

　窓際から感じる冷気が少し寒いのか彼は腕をさすった

　私は少し湿気っぽく暑いと感じる

　もう夜だからか、曇っているからだろうか

　空は重たく暗い

「もう梅雨ですねぇ」

　私はのっぺりとした声を上げるとだねぇ。と彼からもふわふわした返事が返ってくる

　春が終わり梅雨が始まった

　彼は眠そうだったはずなのに、隣で少し楽しそうだ

　そんな彼を見ながら私は首を傾げて彼の顔を覗き込む

「雨好きだったっけ？」

　昔にデートしたときは雨だと心なしか元気がなかったと思うけど

　そう言って笑うと彼は真面目に考えてくれる

　んーと小さく声を出す

「…雨音は好きかなー？」

　そう言う彼に、私はピンと来たように彼の腕を引っ張る

「手伝って！」

　私がソファーに手を添えれば、また運ぶの〜？と少しめんどくさそうだ

　でも私が何を言いたいのかは分かっているようですぐに二人で窓際に運びなおす

　場所はもちろん窓際

「座って座って！」

　私はパタパタと走ってお酒を取りに行く

　そうしてまた軽く走ってソファーの背もたれの方から彼にお酒を渡す

「梅雨の時期も晩酌ですなぁ」

　カンッと小さい二人だけの乾杯を交わして、梅雨の小さな楽しみがまた増えた

　彼はなんだかんだ楽しそうに笑って呟いた

「結局これ毎日やってるよね」

いじめっ子　*そらちぃ→←洋服選び　*エイジ

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