5話〜千side〜 ページ6
Aは万の妹で、まあ、僕の元カノ。
別れたのは、五年前。
万のことがあったから、彼女たちの両親に引き離されるように別れた。
そんな大神兄妹と再会したのは嬉しかった。
先に再会したのは、Aだった。
ドラマ撮影の時、メイクチームを仕切るリーダーとして紹介された。
『ツクモプロダクション所属のメイクアップアーティスト、大神です』
誰かの呼吸が止まった。誰の呼吸だ。
……嗚呼。
……僕だ。
長い髪をポニーテールにしていたのをバッサリと切り、昔の万みたいな髪型になっていた。
顔付きも、大人っぽくなっていた。
何よりも彼女の夢が半ば叶っていた。
嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて。
会いたかったんだ。
五年間、寂しかったんだ。
だから、食事に誘った。
すると彼女は微笑んだんだ。他人のように。
『すいません、私、子供いるので……』
やんわりとした拒絶。
あれから五年だ。僕だって百とRe:valeをやっている。
だから、Aに新しいパートナーができたって不思議じゃない。
でも、話がしたくて。
好きだと言ってくれたRe:valeの話をしたかった。
その度に、拒絶された。
しまいにはネタにされた。
百に詳しい事情を話すと、驚きながら笑っていた。
『だって、千はまだ好きなんでしょ?』
『……かもね』
"かもね"じゃない。
好きなんだ。
でも、向こうは子持ち。
こっちはアイドル。
でも、少しだけでいいから、話がしたい。
せめて、あの日の話だけでも。
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作者名:通りすがり | 作成日時:2019年7月8日 9時