漆黒の狗は黒の時代でも困っていたそうです5【文スト】【芥川成り代わり】

第百六十七話『宣言サセテ頂キマス』 ページ10

太宰が去った廊下には芥川と中也が立っていた
互いに口を開かずにいた



数分経過した後､中也はやっとのこと言葉を発した




中｢手前は……彼奴が嫌いか？｣



『……いいえ､嫌いになりません｡寧ろ､好きです』



中｢……ん？｣




今なんか後輩が変なことを云った気がする｡好き？芥川は太宰を？と､中也の頭の中は混乱した




『勿論､嫌いになろうとした時もありました｡僕の名を呼び､執拗いく追いかけて来て鬱陶しい時もありました』



中｢あ､ああ｣



『しかし､矢張り嫌いになれないんです｡
こんな自分を拾ってくれた彼の人の為にも､使命の為にも僕は強くならなければいけない｡そうなる為には太宰さんに指導してもらわなければならない』




そうだ､ここで折れたらこの先どんな辛いことが待ち受けても引き返してしまうだろう
原作の芥川龍之介だって太宰にあれだけ冷たくされても必死に後ろを付いて行ったのだ




『中原さん､僕……太宰さんの所に行ってきます』



中｢は？おい､芥川……！ってなんだあの早さは！｣




混乱していた中也は急な芥川の行動に付いていけず追いかけることができなかった






太宰の執務室の前に来た芥川

云うんだ､云ってやるんだ｡此の人について行くと決めたのだから




『失礼します』




控えめにノックをして返事を聞かずに扉を開ける
そこには散らばった書類の上に座り本を読んでいた太宰がいた




『お話し合いはしません｡しかし僕､ここで宣言させて頂きます』



太｢……は？｣




訳の分からないという顔の太宰を見て手を腰に当て口を開く




『僕は貴方に拾われた日から男として生きていくと決めました｡
女だからと莫迦にされず強くある為に､異能力を磨いて大切なものを守る為に､貴方をギャフン！と云わせる為に｡
決して楽ではない道のりだが強くなる為には貴方に頼るしかない』




芥川は力強く云い呼吸を整える
太宰は目を丸くして此方を見ていた




『故に､貴方にどれだけ嫌われても､どれだけ付いてくるなと云われても……僕は貴方を好きでいて､ずっとついて行きます』



太｢……ぇ｣




あんぐりと口を開ける太宰の頬が少しだけ赤くなる
芥川は云いたいことを全て云え､スッキリした表情だ




太｢君が……私を……好き？｣



『はい』



太｢ずっと私のそばに居てくれる？｣



『はい』



太｢……ふふ､うふふふふふふっ｣




太宰の鬼魅の悪い嬉しそうな声が執務室に響いたのだった


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