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第四十四話【久し振りの友人】 ページ45

「……まあ、いい。撤退するよ」



「……太宰さんいいのですか?折角……」



「私の言葉が聞こえなかったのかい?撤退だ。行くよ」



「しかし……」



『執拗いと嫌われるよ、芥川君〜』



「……」




芥川君はチラリとこちらを見てから歩いて行った。
なんだろう?云いたいことあるなら云えばいいのに。




『なになに〜?芥川君、私に云いたいことでもあるの?』



「……無い」



『またぁまたぁ〜何か云いたそうな顔をして』



「まあ、今日のところはお互い様という事で……行くよ」




太宰君は私の言葉を遮り、黒い外套を翻して私に背を向けて歩き出した。

芥川君はそんな上司の後をついて行った。

樋口ちゃんも静かにその場を去った




『……ふぅ、早く帰って和菓子を食べよ』




仕事をした後は甘いものが一番だ。
これから大変な事が待ち構えていそうだが頑張るしかない。




『……守り抜くから』




ポツリと呟いて俯く。


大切な家族を守り、家族の大切なモノも守る。


私を自由にしてくれた福沢さん。
優しい乱歩君や晶ちゃんの為にも……


彼らが私に正しい道を進めと願うのであれば
私は正しい人間になれるよう頑張る。




『この時間がずっと続くなら』




喩えその選択が私に死を招く事だとしても。
この世界が、街が、仲間が、家族が……好きだから。




「やっぱりまだ居た」




不意に後ろから声がして振り返ると太宰君が立っていた。
何故、彼が此処に?




「不思議そうな顔してるね」




そう云うと此方に向かって歩き出して思わず身構える。

銃で私を撃つのか?それともナイフ?
否、何処かに部下が隠れていて一斉に襲いかかってくる?




「そんな警戒しないでよ……ねえ」




ゆっくりと腕が伸びてきて私の背中に回された。
逃げようとするが、がっちりホールドされて逃げれない。




『……な、何?どうしたの、太宰君?』



「君にはもう一度ちゃんと逢って話したかった。
四年もだよ?四年も君に逢えなかったんだ」



『……私も。太宰君と逢ってたくさん話がしたかった』



「本当に?」




強く抱き締めるその腕は殺意は微塵もなくて。
温かくて、優しくて……心地が良かった。




『うん、友人に嘘を吐くわけないもん』



「じゃあこのまま連れ去ってもいい?」



『え?何で?』



「……冗談さ」




不思議に思い首を傾げると、彼は満足そうに笑ったのだった。


.

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らしろ(プロフ) - 有栖川.さん» コメントありがとうございます。可愛いと言っていただけて嬉しいです!更新頑張ります、引き続きお楽しみ下さい! (2020年5月26日 21時) (レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
有栖川.(プロフ) - 織田作、、可愛い…。更新頑張ってください!! (2020年5月26日 19時) (レス) id: 365395094b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:らしろ | 作成日時:2019年6月21日 18時

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