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第三十一話【新章開幕】 ページ32

『ねぇ国木田くぅん。
仕事から帰ってすぐの虎探しって疲れるんだけど?
早く帰ってゲェムしたいぃ』



「何を云ってる、マヌケ。
貴様は本気で見つけようとしないからこんなに長引いて……」



『わぁ、国木田君。見てみてよ、いい川だね〜』



「川など見ても虎はいな……っておい!」




────バッシャンッ!!



水飛沫が舞う
国木田君の焦った声がこだまする




『(あぁ……やっと────“開幕”だ)』




中里A



武装探偵社で働いている



今年、十九歳になった少女



ちょっとこれから川を流れる予定




『(……誰か私を助けてくれるのだろうか)』




そんな心配をしながら体はどんどん流れていく


どのくらい経ったのだろうか?
引き摺られる感覚がして薄らと目を開ける




『……ん』




上半身を起こして隣に四つん這いになっている
白髪の少年を見る
ああ、間違いない。この子は……




「ケホッ……流されてたんですけど……大丈夫ですか?」



『君なの?私の入水の邪魔をしたのは』



「じゅ……入水?」



『知らないの?入水だよ、じ、さ、つ!』



「しっ、知ってますよ!?でもなんで若いのにそんな……」



『ま、嘘だけど』




焦った顔をしていた彼が真顔になった。
どっかの迷惑噴射器なんかよりちゃんとしているのだから。
今回、川を流れていたのは君に逢う為なのだから。




「えっと」




……ぐぅぅぅうううううっ

笑ってしまいそうになるくらいの大きさの腹の虫が鳴いた




『空腹なの?少年』



「は、はい。実はここ何週間かまともに食事してないので」




……ぐぅぅぅううううう
あ、人のことは云えないかもしれない





『因みに私も。お餅食べたのになぁ。あっ川に財布流されちゃった』



「えぇぇ……」




私に奢ってもらおうとしていたな?
此処は勿論あの人に奢ってもらう




「ゴォラァァアアア!!こんな所におったか!中里!!」



『国木田くーん!やっほー!』




反対の岸から国木田君の元気のいい声が聞こえた。
相変わらず声が大きくて良き!




『じゃあ少年。私の同僚にたんまり奢ってもらおう!』



「……同僚?」



『そう!彼は国木田独歩……あ、君の名前は?』



「中島……中島敦です。貴女は……」



『私は中里 A。ようこそ、外の世界へ。歓迎するよ』




少女は少年に手を差し出した。

少年はその手を力強く握った。





……新たな歯車が回り出す。



.

第三十二話【覚えていて】→←第三十話【本格的に動き出す】



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らしろ(プロフ) - 有栖川.さん» コメントありがとうございます。可愛いと言っていただけて嬉しいです!更新頑張ります、引き続きお楽しみ下さい! (2020年5月26日 21時) (レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
有栖川.(プロフ) - 織田作、、可愛い…。更新頑張ってください!! (2020年5月26日 19時) (レス) id: 365395094b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:らしろ | 作成日時:2019年6月21日 18時

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