第二十七話【この人ならば】 ページ28
「話をしようと思ったんやけどなあ、中里」
『……私と貴方は何も話す事などありませんよ』
後ろを向いて強く睨みつける。
彼は平然としている。
「何処へ行く」
『……友人を救けに』
「……友人……救け……お前さんがそんな言葉を遣うようになるとは」
「離してください、種田さん」
彼────種田さんは少し笑って手を離してくれた。
私は不貞腐れながら廊下を歩く。
「……中里」
不意に呼び止められて足を止める。
「……あの人には逢ったのか」
『いいえ、逢いたくもありません』
ハッキリと云って
種田さんの顔が寂しそうに見えたのはきっと気の所為だ。
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『太宰君〜』
「あ、来た」
甘味処の駐車場に泊まっている黒い車に駆け寄る。
運転席には太宰君、後部座席には氷漬けの織田さん。
こうしてみると織田さんには少し悪いことしたなぁと思う。
「鍵は開いてるよ」
『はぁい』
後部座席のドアを開けて織田さんに触れる。
すると氷が弾けるように割れて消えた。
「……ん」
「織田作!」
『織田さん!』
二人で呼びかけると織田さんは目を開けて此方を見た。
「……太宰と中里?」
『善かった〜、意識はあるね』
「冷や冷やさせないでよ、織田作」
「すまない」
意外にもケロッとしている織田さんに安心する。
しかしまぁ、何故こんなにも危ない目に遭うのだろうか。
『織田さん、私の御守りが無かったら重症でしたからね』
「ああ、助かった」
「全く……彼女には返しても返しきれない恩があるね」
話を聞くと織田さんは単身でミミックの住処に乗り込んだらしい。
そして敵の長と一騎打ち。
『無茶し過ぎです』
「中里からの御守りがなければ確実に死んでいた、ありがとう」
『貴方が無事ならそれでいいんです』
「私からもお礼を云うよ、本当にありがとう」
『……珍しいね、太宰君が弱気だ』
太宰君は優しい顔で私を見た。
「当たり前だ。君が居なければ、織田作は……」
そこで口を閉じる。
そりゃそうだ、大切な友人を一人、亡くすところだったのだ。
『……どういたしまして。織田さん、これからは気を付けてくださいね』
「善処する」
そう云って笑った彼に私もつられて笑った。
……あぁ、この人ならば
『ねぇ、織田さん。武装探偵社に来ない?』
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らしろ(プロフ) - 有栖川.さん» コメントありがとうございます。可愛いと言っていただけて嬉しいです!更新頑張ります、引き続きお楽しみ下さい! (2020年5月26日 21時) (レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
有栖川.(プロフ) - 織田作、、可愛い…。更新頑張ってください!! (2020年5月26日 19時) (レス) id: 365395094b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らしろ | 作成日時:2019年6月21日 18時