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え…と、聞き返そうとしたその瞬間。
優しく紡がれる言葉と同時に、
涼介は私の髪を耳にかけて私を見つめてきた。
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涼介「誰かに取られるの、想像するだけでイライラするし
隠れて会ってた大ちゃんやヒカたちにも恨み持ってるし。」
「…っ、それは…!」
涼介「うん…分かってるちゃんと。」
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ポンと頭に手を置かれて、にっこり微笑む涼介。
偽物だと、一瞬で分かる笑顔…
でも、本当に涼介はちゃんと分かっている。
分かっているから、私は何も言えない。
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「あの、涼介…」
涼介「あー大丈夫。恨んでるからって
あいつらにキツく当たったりはしないから。」
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そして、笑顔がものすごく怖い。
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涼介「でも分かってよ。
何でとか関係なくて、それぐらい好きなんだって。」
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私の髪を1束指で掬った。
涼介の指がサラサラと流れ落ちる髪を、摘んで。
一歩で距離を詰めて、ふわりと涼介の香りが漂る。
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「りょうすけ…っ。」
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どうしても、嬉しいと思ってしまう。
もう好きになる資格はない。
そう思おうとしても、もう溢れてくる想いを
抑えることなどできなくて。
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涼介「なに?」
「…っ。」
涼介「教えて、A。」
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大きな手でほっぺたが包まれて。
涼介に懇願されて。
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涼介を裏切ったのに。
そう思うのに、絶対に離さないって
指先から伝わってくる。
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これ以上抗えない…
私は涼介の手を重ねて、ゆっくり口を開いた。
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「好き…です。」
涼介「うん…」
「本当は…ずっと前から大好きでした…」
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もう戻れない。
抑えきれない言葉と涙が溢れ出す。
涼介はずっと、私を見つめたままだった。
そのままコツンと額が当たって、涼介は雪解けにも似た速度で
ゆっくりと口元を綻ばせた。
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涼介「やっと言ってくれた…」
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きゅっと細められた瞳は、この上なく優しい。
心の底から嬉しくて、また涙が溢れて。
.
涼介「A…」
「ん…っ?」
涼介「Aもお腹の子も、幸せにする。」
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涼介が抱きしめてくれる。
溢れる涙をその指が拭いてくれることに
私は幸せを感じた…
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愛(プロフ) - おはようございます♪何回見ても泣けるお話です(泣)続編見たいです★楽しみにしてます(•‿•) (6月17日 7時) (レス) @page49 id: 170da3309e (このIDを非表示/違反報告)
まりも(プロフ) - ぱんださん» お返事遅くなりすぎて申し訳ございません…!何度も読み返してくださりありがとうございます。作った者としてこれ以上無い褒め言葉です。マイペース更新になりますがよろしくお願いいたします。 (5月27日 22時) (レス) id: 9a2317564f (このIDを非表示/違反報告)
ぱんだ(プロフ) - 私はこの作品のファンとして毎度更新を楽しみにしていました。終盤は涙が止まらなくなることも多く、気づけばこの作品にのめり込み、何度も読み返しています。そして何度読んでも毎度号泣しています。今作も楽しく拝読しています。これからも陰ながら応援しています。 (2023年2月5日 7時) (レス) id: 399b55da19 (このIDを非表示/違反報告)
まりも(プロフ) - るん。さん» 嬉しいコメントありがとうございます!楽しんでいただけて嬉しいです。ちょうど今新作公開したので、お時間あればお越しください。 (2022年12月31日 18時) (レス) id: 9a2317564f (このIDを非表示/違反報告)
るん。 - 本当に本当に本当にお疲れ様でした。最初から最後までとても楽しく読ませて頂きました。小説の本を読んでるかのように読みやすく感情移入しやすかったです。1番好きな小説です!また新作できた際には拝見させていただきます! (2022年12月18日 11時) (レス) @page49 id: fde368863d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まりも | 作成日時:2022年10月8日 0時