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ぼやける視界と涼介の甘い香り。
抱きしめられたときは涼介の髪がいつも私の首に当たって
チクチクしていた。
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「涼介、やめて…」
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その感触が懐かしくて。
こんな状況にも関わらず、鼓動が早くなるのが嫌になる。
あまりに突然すぎる出来事に、慌てて押し返そうとするけど、
ビクともしなくて、涼介は離してくれない。
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涼介「同情で傍にいたいんじゃない。
もう離れたくないから一緒にいたいだけ。」
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耳元で囁く声は切なくて、胸が締め付けられる。
涼介の唾を飲む音が聞こえてきて
ゆっくりと身体が離れる。
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「…意味分かんない。私と一緒にいたら辛いだけだよ。」
涼介「辛くない。勝手に決めんな。」
「…っ、幼馴染だからそう思ってるだけ。
涼介は私のこと好きじゃな…」
涼介「だから勝手に決めるなって!」
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見つめてくる瞳に吸い込まれそう。
その涼介の真っ直ぐな瞳と純粋な気持ちが、
これでもかと言うほど心臓を鷲掴みにしてくる。
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涼介「いくら“幼馴染のA”が好きっつたって、
それ以外好きになれなかったらずっと一緒にいたりしない。
そんな簡単になんか離れられない。ムリ。」
「…っ、でも…!」
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グンっと腕引っ張られる。
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涼介「てかAはどうなの?そんなあっさり諦めるくらい
Aにとって俺は軽い存在だったの?」
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唇が触れそうなほど近い距離。
お腹の中ではトントンと蹴る私の子ども。
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涼介「“好きだから一緒にいたい”のか
“嫌いだから離れたい”のか。
俺が聞きたいの、どっちかなんだけど。」
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涼介の大きな手は、いつも私の手首を簡単に捉えて
でも、掴む手はとても優しくて。
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涼介「はっきり言って。A。」
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いつもいつも優しすぎる。
優しすぎるから…
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「私は…涼介が嫌い。」
私はまた嘘をつく。
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「嫌いだから、いい加減に離れてよ…」
もう、涼介の重荷になりたくない…
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愛(プロフ) - おはようございます♪何回見ても泣けるお話です(泣)続編見たいです★楽しみにしてます(•‿•) (6月17日 7時) (レス) @page49 id: 170da3309e (このIDを非表示/違反報告)
まりも(プロフ) - ぱんださん» お返事遅くなりすぎて申し訳ございません…!何度も読み返してくださりありがとうございます。作った者としてこれ以上無い褒め言葉です。マイペース更新になりますがよろしくお願いいたします。 (5月27日 22時) (レス) id: 9a2317564f (このIDを非表示/違反報告)
ぱんだ(プロフ) - 私はこの作品のファンとして毎度更新を楽しみにしていました。終盤は涙が止まらなくなることも多く、気づけばこの作品にのめり込み、何度も読み返しています。そして何度読んでも毎度号泣しています。今作も楽しく拝読しています。これからも陰ながら応援しています。 (2023年2月5日 7時) (レス) id: 399b55da19 (このIDを非表示/違反報告)
まりも(プロフ) - るん。さん» 嬉しいコメントありがとうございます!楽しんでいただけて嬉しいです。ちょうど今新作公開したので、お時間あればお越しください。 (2022年12月31日 18時) (レス) id: 9a2317564f (このIDを非表示/違反報告)
るん。 - 本当に本当に本当にお疲れ様でした。最初から最後までとても楽しく読ませて頂きました。小説の本を読んでるかのように読みやすく感情移入しやすかったです。1番好きな小説です!また新作できた際には拝見させていただきます! (2022年12月18日 11時) (レス) @page49 id: fde368863d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まりも | 作成日時:2022年10月8日 0時