過去を捨てて【中堂系】

不自然２８ ページ37

あれから、私は系くんと距離を置くようにした。



もちろん、解剖の時は支障が出ないようにいつも通りに対応するけど

解剖が終わったあとは、必ず系くんの後に解剖室を出る。



ミコトや夕子から事情を聞かれたり、
「今のままじゃ中堂さんが爆発する！」って怒られたりしたけど。




ごめんね、私の都合なんだ。

このまま系くんの側にいても、夕希子さんの事が頭から離れない系くんの事を嫌いになってしまう。



あの裁判所での表情が、頭に焼き付いて離れない。

系くんにあんな切ない顔させるのは、

きっとこれまでも、これからも、夕希子さんだけだ。








私は、別に思い続けるのが悪いって思ってるわけじゃない。

一途なのは素敵な事だし、系くんは優しいから幸せにしてあげたかったんだろう。

結婚間近での事件だったらしいし。





系くんのその一途な思いが、
彼女である私に向けられていない事実に、悲しくなって。



だからといって、系くんのもとを離れたくない。









「面倒臭い女だなあ…」






ひとり呟いた声は、









波の音にかき消された。

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