過去を捨てて【中堂系】

不自然２０ ページ29

中堂side


中「…お前は、それでいいのか」


絞り出すように声を出す。
自分のせいで、Aが不便な思いをする事に耐えられない。



俺がいなかったら、お前は自分のやりたい所で自由に働けた？

俺がいなかったら、お前は幸せにしてくれる相手に出会えた？



そんな思いばかりが頭を擡げる。




「私は全然構わないよ。元々お断りしようとしてた件だから」
中「そうじゃない。…俺のせいで、自分の人生を棒に振ることになる。ことの重要性を理解してるのか。」
「…私は、系くんの傍で仕事が出来たらそれでいいから。ずっと、支えていくつもりだし」



眩しいほどの笑顔でそう答えるA。


昔からそうだ。
何が楽しくて俺について回るのか分からないが、
いつも楽しそうに、幸せそうに笑う。


好きだと告白された時に、
俺が夕希子の過去から抜け出せないことを伝えると
「それでもいい」と、
「そのままでいい」と言った。



何度その明るさに助けられたか分からない。

いつの間にか惹かれている自分にも驚いたが。




中「…ここまで来たら、逃がさねえぞ」
「うん、そのつもりだよ」



かかってこい！なんてふざけながら解剖室を出ていった。



自然に上がる口角に気づいて、
それを隠すようにタオルを顔にかけて
また解剖台に寝転がる。




…あいつには、一生かかっても敵わないな。

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