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(you-side)
詩ちゃん、と私自身の名前を呼ばれたのはいつぶりだろう。
１３歳のあの日。
私が歌を凶器にしてしまったあの日から。
私の事を、認識してくれることはなくなってしまった。
最初は、胸が潰れそうなほどの自責の念と共に。
それでもまだ心の何処かで、母を追い求めていた自分がいて。
大人になって、いつしかその気持ちも諦めるようになってからは、元々呼んでいた‘ママ’から、‘お母さん’と呼ぶようになった。
私と兄さんは元々お母さんに対しての呼び方が違っていて。
兄さんが使っていた‘母さん’を口にする度に、自分が自分ではなくなっていく恐怖に、飲み込まれそうになってしまったから。
千「声楽をやめて、こんなことをしていたのね」
「っ……ごめん、なさい」
何度も、何度も期待を裏切って。
こんな親不孝な娘で、ごめんね。と。
俯いた私に、お母さんは続けた。
千「貴女が初めて私に聴かせてくれた曲と、コンクールで失格になったときに歌ってくれた曲は‘ふるさと’だったわね」
「う、ん」
千「あの日の事を、思い出したわ」
homeを聴いて、と続けられた言葉にドクンと心臓が音を立てる。
家族を想って作った曲。
──私の想いはまた、
──あの日のように、お母さんを傷付けた？
「私……、」
千「詩ちゃんは──」
震えだす私の言葉を遮って。
千「───本当に、歌が上手ね」
もうずっと、ずっと昔。
まだ、家族が壊れていなかった頃のあの笑顔で、お母さんは言った。
「お、母さ…」
千「私はずっと間違ってた。家族のあるべき姿に固執して、大事な物から目を背けて」
でも……と。一旦息をついたお母さんは続ける。
千「もし……まだ、帰れるのなら…………私はまた、貴女と家族をやり直させてくれる？」
「！」
千「私に、その資格はまだある？」
気まずそうに。恐れるように。
だけど真っ直ぐに私を見つめるお母さんの眼差しに、喉が震えた。
「本当に……？」
──ずっと、後悔してた
「今度は、ちゃんと……伝えられた…？」
──只、私の事を見てほしいと願って歌ったあの日
──本当に伝えたかった事は、何も伝わらなかった
ポロリ、と頬を伝い始めた涙は次から次へと溢れ出す。
「お母さ──」
膝をついて嗚咽を漏らす私を、お母さんは優しく抱き締めてくれる。
「おかあさん……っ」
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海(プロフ) - くみさん» ありがとうございます！楽しんで頂けて、とても嬉しいです♪しかもかなり長かった筈なのに一気読みして頂いたとは…！本当にありがとうございます！マイペース更新ですが、これからも精一杯頑張りたいと思いますので、よろしくお願い致しますm(__)m (2019年6月22日 8時) (
レス) id: 00727ba42b (このIDを非表示/違反報告)
くみ(プロフ) - ものすごく楽しいです！！昨日から一気に読んでしまいました！これからも楽しみにしてますね！ (2019年6月21日 12時) (レス) id: 9ac3551b76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海 | 作成日時：2019年3月24日 19時
