25 ページ26
(uno-side)
宇「不治の病だったんだって」
父親の事を呟いた詩に、そう言う。
宇「自分が助からない事を知ったら千弦さんは悲しむから、それなら恨まれた方がマシだって思ったらしいの。高倉さんも……こうなるくらいなら真実を伝えておけば良かったって後悔してた…」
夫を最後まで愛し、子ども達に会わせてあげたいと願った千弦さん。
詩が愛されてほしいと願い、母親が事切れた姿を目の当たりにして絶望したお兄さん。
ただ、母親に自分を見てほしくて、家族で笑い合う事を夢見ていた詩。
たった一人家族を想って、自ら嘘で真実を隠したお父さん。
宇「これが、高倉さんが私に教えてくれたこと」
何年も、もう気が遠くなるほど長い年月。
高倉さんは苦しみながら真実を背負っていた。
伝えるべきだと後悔したことも少なくなかったんだろう。それでも、当事者の意思を優先したんだろう。
宇「私が今詩に伝えたのは、詩に知ってほしかったの」
自分を責めてほしいんじゃない。
後悔してほしいんじゃない。
宇「詩はこんなにも家族思いな人達の一員だったんだよ」
愛されていたということを、知っていてほしい。
今の詩なら、受け入れられる気がして。
「そっか…」
伝えたのは、決して間違いではなかったと。
穏やかに微笑む詩を見て、そう思った。
「ありがとう、実彩子」
出来上がった料理を盛り付けながら、詩は独り言のように呟く。
「家族に沢山愛されて、AAAメンバーとしても愛されて、私って幸せだね」
私にとって詩は昔からの親友で。
出会った頃の詩が今の真実を知っても、きっと受け入れられなかっただろう。
……きっと、今でも完全には難しいかもしれない。
どれだけ頭で理解しても、罪悪感が完全に消えることはないだろうから。
──でも、今の詩は
──前を向ける力を持ってる
一人じゃ進めないときには誰かに頼ると言うこと。
時には立ち止まって、戻って。
そしてまた、歩き出せること。
初めて出会ったあの日から、詩は確かに前に進んでる。
……それに、今の詩には手を差し伸べる仲間だって沢山いる。
「ねえ、実彩子」
宇「ん?」
「私……お願いしたいことがあるの」
まっすぐに私を見るその眼差しに、私は笑って頷いたのだった。
244人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
海(プロフ) - くみさん» ありがとうございます!楽しんで頂けて、とても嬉しいです♪しかもかなり長かった筈なのに一気読みして頂いたとは…!本当にありがとうございます!マイペース更新ですが、これからも精一杯頑張りたいと思いますので、よろしくお願い致しますm(__)m (2019年6月22日 8時) (レス) id: 00727ba42b (このIDを非表示/違反報告)
くみ(プロフ) - ものすごく楽しいです!!昨日から一気に読んでしまいました!これからも楽しみにしてますね! (2019年6月21日 12時) (レス) id: 9ac3551b76 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:海 | 作成日時:2019年3月24日 19時