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夫を喪った哀しみに暮れていた千弦の元に、数日後、とある手紙が届く。
──俺はもう家族と一緒にはいられない
──俺が愛したのは君の歌だったんだ
──歌えない君に、もう用はない
その手紙に深く傷付いた千弦は、それでも２人の子どものため女手一つで子育てに励む。
そして数年後。
娘の詩が声楽をやりたいと言い出した事から、また運命が変わった。
元々声楽をやっていた兄と、新しく始める妹。
千弦の胸に、ある想いが芽生える。
──この子達と、お父さんと、家族でもう一度暮らせたなら、
それは母親としての願い。
その想いが、これまで築き上げてきたものを、皮肉にも歪めてしまう。
声楽の世界に飛び込んだ詩の才能はすぐに花開き、それはかつての千弦を思い出させるもの。
一方で、兄の奏には詩や千弦のような才能はなかった。
自然と、千弦は奏に付きっきりになり、詩には目が向かなくなってしまう。
奏はそんな母を何度も諌めた。
奏「詩の事も見てやってよ」
奏「才能はあっても、俺よりも小さい女の子なんだよ」
千弦も分かっていた。
だけど。
千「あの子……前に一度言っていたの」
「ねえ、どうしてうちにはおとうさんがいないの？」
千「詩ちゃんに、会わせてあげたい。……貴女のお父さんは、この人だよって」
──
───
.
(you-side)
宇「娘に父親を会わせてあげたい。その想いは母親の愛。だけどそれは…詩の事も、お兄さんの事も……それに、千弦さん自身も追い詰めてしまったって」
今にも泣きだしそうな表情を浮かべる実彩子に、私は呟く。
「それであの日、私があんなことをしたから……お母さんを追い詰めたんだね」
宇「それは詩のせいじゃない」
フルフルと首を横に振って、実彩子は続けた。
宇「確かに結果的にはそれが引き金だったのかもしれないけど、遅かれ早かれそうなってたんだと思う。前々から高倉さんは相談を受けてたんだって。子ども達を預かってほしいって、自分はもうおかしいからって」
「え……？」
宇「だから事件が起きた日、高倉さんは優子さんに後を任せていた。……後追いって形でお兄さんは助からなかったけど…」
皮肉なものだな、と。
自分でも思う。
でも、１つ分からないこと。
「お父さんは、どうしていなくなったんだろう」
言葉通り、私達を捨てたんだろうか。
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海(プロフ) - くみさん» ありがとうございます！楽しんで頂けて、とても嬉しいです♪しかもかなり長かった筈なのに一気読みして頂いたとは…！本当にありがとうございます！マイペース更新ですが、これからも精一杯頑張りたいと思いますので、よろしくお願い致しますm(__)m (2019年6月22日 8時) (
レス) id: 00727ba42b (このIDを非表示/違反報告)
くみ(プロフ) - ものすごく楽しいです！！昨日から一気に読んでしまいました！これからも楽しみにしてますね！ (2019年6月21日 12時) (レス) id: 9ac3551b76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海 | 作成日時：2019年3月24日 19時
