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(nishijima-side)
車で家に帰る途中、似た後ろ姿だなと見たら案の定彼女で。
車を止めると、フラフラと危うい足取りで踏み切りの方へ歩いていく詩が見えて。
いてもたってもいられなかった。
西「やめろ!!」
無我夢中で今にも消えそうな詩の腕を掴み引いて。
西「何してんだ!!馬鹿!!!」
ボーッと見上げてきた詩は、俺の怒鳴り声に肩を跳ねさせる。
「あ、私……」
呆然と踏み切りを見た詩は、自分がしようとした事に漸く気付いたのか。
後から震え始めた身体を抱き締めた。
西「何であんなことしたの」
そのまま車に乗せて、すぐ近くだった詩の家まで行って。
元は高倉さんの家でもある広いリビングで、向かい合った俺は詩に尋ねる。
「ごめん、なさい」
西「謝ってほしいんじゃない。理由が聞きたい」
「…ちょっと、疲れてて」
本当にごめんなさい、と。
浮かべられたのは、見慣れた詩の控え目な笑顔。
──今、この顔が見たいわけじゃない
優しくて、儚げで、だけど一線を越えさせてはくれない。
そんな笑顔が見たいんじゃない。
そんな答えが聞きたいんじゃない。
西「ただのメンバーとしてなら、頼ってくれた?」
ポツリと浮かんだのは、そんな考えだった。
「……え?」
西「もしここにいたのが俺じゃなくて、宇野とか直也くんとか…他のメンバーだったら、詩は悩みを打ち明けやすかった?」
詩が悩んでるのは多分真鍋くんの事だろうと、簡単に想像はできた。
だけど、恋愛事が絡むとなると俺は複雑な立場でもあって。
──もし、
──俺が告白したことが影響してるのなら
西「……詩が苦しむくらいなら、忘れてくれて良いよ」
「に、っしー……?」
宇野が、涙目で詩を案じてた姿を見て。
秀太が、険しい表情で心配してた姿を見て。
どうすれば詩を守れるのか。
その問い掛けに、自分で薄々と感じてはいた。
──俺のこの気持ちが邪魔になるんじゃないかって
西「もう、好きになってなんて言わない。俺の気持ちも捨てる…から、1人になろうとすんな……!」
胸が痛くて。
本当はこのまま詩を抱き締めて、俺だけを見てくれたらって思う。
だけど、詩はそんな簡単に全てを委ねるような子じゃない事も、痛いほどに知ってるから。
──詩が苦しむくらいなら
踏み切りでの姿を見て、そんな想いが強くなる。
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海(プロフ) - くみさん» ありがとうございます!楽しんで頂けて、とても嬉しいです♪しかもかなり長かった筈なのに一気読みして頂いたとは…!本当にありがとうございます!マイペース更新ですが、これからも精一杯頑張りたいと思いますので、よろしくお願い致しますm(__)m (2019年6月22日 8時) (レス) id: 00727ba42b (このIDを非表示/違反報告)
くみ(プロフ) - ものすごく楽しいです!!昨日から一気に読んでしまいました!これからも楽しみにしてますね! (2019年6月21日 12時) (レス) id: 9ac3551b76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海 | 作成日時:2019年3月24日 19時